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この映画はベストセラーになった末次由紀の同名漫画作品を原作とし、2016年に『上の句』『下の句』の2部作として公開されました。
製作委員会には日本テレビ・東宝・講談社・読売テレビ・電通のほか福井放送など地方局各社も入っています。
監督・脚本は自主製作映画出身で2006年に『タイヨウのうた』で劇場長編映画デビューした若手の小泉徳宏が務めました。
連載漫画が人気になった影響で『競技かるた』の人気拡大に影響を与えましたが、映画化はそれに拍車をかけたといえます。
千早を演じた広瀬すずや太一の野村周平、そして新の真剣佑など人気の若手俳優陣の活躍が舞台となった滋賀県の観光にも貢献しました。
お互いの手札が一枚になった、いわば『じゃんけん』のような状態の『運命戦』で負け続けの太一。
そんな太一は北央との決勝では勝ちました。果たしてそれは偶然だったのでしょうか。
千早に言った「自由になれ」とはどういう意味だったのか、そして試合後に眼鏡を隠したことを新に明かしたのはなぜでしょう。
観る者にかるたをやってみたくなるような高揚感を誘った本作の魅力を、太一の気持ちを中心に深く掘り下げていきます。
運命戦と太一
『運命戦』は先にどちらの札が読まれるかという『運』が大きくかかわっている状況です。
今までことごとく『運命戦』で自分の札が読まれない太一にとっては絶体絶命でした。
『上の句』は太一のストーリー
この作品は2部構成で、前半部分にあたる本作は『太一の話』です。
千早への気持ちや『かるた』のこと、そして新とのこと。
太一の心の中はこの年代の若者には重すぎることだらけです。
そんな中で成長した太一が迎えた『運命戦』は今までとは違っていました。
相手の札に狙いを定めた太一の作戦は「読まれないなら奪い取る」でした。
勝てた理由
相手の札を取るのは実力互角では非常に難しいうえに『運命戦』では不可能に近いといわれています。
その状況で太一が勝てた理由は何だったのでしょうか。
太一は今までの経験で自分の札は読まれないと考えています。
1%もない確率の「相手の札を取る」ことに賭けて集中しました。
素振りを繰り返すその気迫が相手を凌駕し『お手つき』というミスを誘発していきます。
『運命戦』は『運』で決まるのではなく勝利を呼び寄せたものが勝つことを証明したのです。
そもそも青春のすべてを捧げるほどの『競技かるた』とはどのようなものでしょうか。
百人一首と競技かるた
『競技かるた』は『百人一首』を使って札を取り合う競技です。
この映画をより楽しむためにはまず『百人一首』について知っておく必要があります。
百人一首
いわゆる『百人一首』とは平安時代末期の公家である藤原定家が選んだ秀歌撰です。
小倉山で編纂されたことから『小倉百人一首』と呼ばれます。
百人一首といえば『かるた』を連想しますが実は百人が一首ずつ詠んだ歌集ということです。
一般的なかるた
その百人一首を上の句と下の句に分け札にしたものが『かるた』です。
『読み札』と言われるものは上の句と挿絵が描かれています。
その読まれた歌の下の句が書かれた札を取り合うのが『かるた』なのです。
競技かるた
競技かるたの公式大会では本作の中でも使用されている『大石天狗堂』製のかるたが使われます。
ひと昔前のお正月は家族で『坊主捲り』や『かるた取り』で遊んだものです。
その『かるた取り』のルールを厳格化し競技として成立させたものを『競技かるた』といいます。
本作でもわかるようにまるで格闘技のような迫力です。
真剣に競技かるたに打ち込む生徒たちに心を動かされていく宮内先生を演じた松田美由紀の演技も見ごたえがありました。
劇中の歌
作中に出てくる歌の中でストーリーに重要な役割を果たすものがいくつかありました。
映画では『読み手』が読み始めるとすぐに札を取り合うので歌自体をちゃんと味わうことができません。