ジュディットは手紙の中で、ジャンへの愛が冷めて、むしろ一生苦しみ続けることを願います。
実はその手紙の内容は映画序盤で予言されていたのです。予言をしたのは、ジャンの元彼女であるマルタ。
何も理由が語れず、一方的に別れを告げるジャンにマルタはこのように語ります。
うわべだけね。痛い目に遭うわ
引用:アナーキスト 愛と革命の時代/配給会社:ミッドシップ
この「痛い目」というのは、ジュディットの手紙の内容を含めたさまざまなものが当てはまります。
- 潜入捜査官であることがバレる
- ジュディットに嫌われ、アメリカに逃げられてしまう
- エリゼの愛に気付かず、エリゼを死なせてしまう
これらの「痛い目」は、すべてマルタの言葉に集約されており、予言されていたのことが分かります。
ジャンがダイナマイトをバラしてしまった可能性
映画で一番疑問を感じるのが、ダイナマイトがなぜ警察にバレているのかということではないでしょうか。
このダイナマイトがバレた原因ですが、大きく3人のキャストが関わっていそうです。まず最初の容疑者がジャンです。
しかしここではジャンが密告したのではなく、ダイナマイトがバレる「状況を作り出した」と考えます。
警官・検事の不信を買った
映画冒頭や中盤では、ジャンは潜入捜査官としての仕事を務め、報告書(内偵情報)を警察に提出し、報酬を得ます。
銀行強盗をする計画が浮上した際も警察に密告し、犯行前に計画を阻止することを進言しますが、拒否されました。
検事の判断は、犯罪事後に捜査をするということです。さらには、ジャンが以前会ったオーストリア人の尋問をするよう迫られます。
この時のジャンことタハール・ラヒムの表情は、困惑に満ちたものでした。
つまり、アナーキスト(無政府主義者)に犯罪を起こさせようとする検事の姿勢に、ジャンは疑念を抱いたのです。
映像に出てはいませんが、当然検事もそのことを見抜いたはず。つまり、検事や警察側もジャンに対して疑問を持ったと考えられます。
さらに言うと、集会に現れた警官を殴ったり、墓荒らしをしたりと、ジャンはすでに犯罪に手を染めています。
警官としてはこのまま「利用価値はあるが、いずれは切りたい」存在なのでしょう。
ジャンが捜査されていた
検事や警察に疑問を持つ様子は、ジャンがナレーションのように語る報告書にも表れています。
映画を通して、ジャンがナレーションするのは3回。うち1・2回目は報告書の内容です。
そして3回目は、ダイナマイトで検察を襲う直前のシーンで、古新聞に言葉をつづっています。
しかしこの内容は、報告書というよりは、日々の生活について書いている様子。つまり、検事や警察に対する報告はしていないのです。
ジャンからの報告がなくなった検事が次に取る行動は、ジャンをぎりぎりまで利用し、最後は「切る」ことでしょう。
検事の不信を買ったジャンは、おそらく他の警官あるいは内偵者につけられています。その人物がダイナマイトの情報を仕入れるのです。
ジュディットがダイナマイトを密告した可能性
そう考えるとジャンの様子を一番近くで見ていて、内偵していることが一番バレにくい人物がいます。
それが、ジャンと禁断の恋をしているように「演じていた」ジュディットという存在です。これが2人目の容疑者。
ジュディットは欺かれていない
先述したように、映画予告では「ジャンは女を欺いたつもりでも、女は欺かれず愛を教えた」とする意味のキャッチコピーが流れます。
この予告のキャッチコピーから予想されるのは、ジュディットがジャンの正体を掴んでいるということ。
つまりジャンを本当の意味で、欺いたのはジュディットの可能性があるのです。
ジャンと会う以前、ジュディットが心を許していたのはエリゼでした。しかし、そのエリゼは暴力的な行動がエスカレートします。
しかも、ジュディットがジャンに心を寄たように見えるシーンは、酒に酔っていたときや、エリゼの発作後の行動に嫌気がさしていた場面。
つまり本気で愛していたと取れない状況です。そう考えると、ジュディットのジャンに対する恋心は一時的なものである可能性もあります。
あまり考えたくはないですが、ジュディットはジャンを愛してはいなかったのです。
ジャンを利用
ジュディットには小学校の先生になるという夢があり、アメリカの友人からその誘いを受けていました。
そうなると、ジュディットにはジャンをとことん利用して、自分のアナーキストとしての犯罪行為を帳消しにする必要があります。
その時、都合よくジャンが警察に疑念を抱いており、犯罪に加担する様子がありました。そのジャンを警察にジュディットは売ります。
ついでにダイナマイトの情報も密告するのと引き換えに、犯罪行為を真っ白にしてアメリカへ渡るのです。