シモーネと一緒にいれば他の友達とはできない悪い遊びも楽しめますし、それをシモーネのせいにもできます。
つまりシモーネとつるんでいる限り、マルチェロは被害者面しながら甘い蜜も吸えるのです。
一種の隠れ蓑であるシモーネを、マルチェロはいいように利用していたといえるでしょう。
シモーネを犬用ゲージに閉じ込めた意味
隠れる場所として犬用ゲージにシモーネを入れることに成功したマルチェロ。
シモーネにとっては拘束場所という認識しかなかったようですが、マルチェロにとっては大きな意味があったように見えます。
犬用ケージに閉じ込めた理由とは何だったのでしょうか。
シモーネに分からせる
シモーネをただ殺すのでは、マルチェロが裏切ったとしか認識せずにシモーネが死んでいくだけ。
そんなにあっさり死なれても困ると思ったのかもしれません。
長年の主従関係をひっくり返したことをシモーネに認識させてから殺したかったのでしょう。
シモーネのせいで刑務所暮らしもさせられたし、殺すくらい憎しみが湧き上がっているわけです。
そんな自分の苦しみを分からせたいと思うのは理解できます。
飼い主と犬の立場が入れ替わったことを示して、飼い犬として死んでもらう。これこそがマルチェロの最高の復讐方法だったのでしょう。
自尊心を満たす
自分は犬ではない。自分の方が上だという自尊心を満たすために犬用ゲージに閉じ込めたとも考えられます。
マルチェロは自分の方が立場が上だと前々から思っていたのではないでしょうか。
ただ暴力を振るうだけのシモーネは、腕力があるだけで実は何もできない馬鹿なのだと、内心見下していたように見えます。
それに引き換え離婚したとはいえ妻と娘がいて、自分の店も持っている。
決して豊かではないけれども幸せな生活を送っている自分の方が勝ち組だと考えていたのではないでしょうか。
そしてそんな自分が暴力しか取り柄のないシモーネに負けるはずがない。
実は小者の方が自尊心が強く、プライドが高いことはよくあります。
マルチェロもそんな人種の一人で、シモーネを犬用ゲージに入れることで、自分より下の存在だと明白にしたかったのかもしれません。
下克上は成功したのか
シモーネが飼い主でマルチェロが犬という構図が最初から描かれていました。この関係をマルチェロが不服に思い、下克上を謀ります。
犬用ゲージにシモーネを入れたことで、立場の逆転が成功したように見えますが、本当にそうでしょうか。