ゲージに入れられたシモーネは殺されるまで反抗していました。
物理的に閉じ込めても、シモーネが屈服しなければ関係性は変わらないのではないでしょうか。
シモーネが降参する前に殺してしまったので、主従関係が逆転したというよりも「消滅した」の方が正しいように思えます。
つまり下克上は失敗し、これからのマルチェロには殺人者という汚名が付きまとうのです。
シモーネを殺したマルチェロが仲間に無視された理由
街の厄介者であるシモーネが死ねば、みんな喜ぶとマルチェロは考えていたでしょう。
仲間と関係を再構築するには、シモーネ殺害は大きな切り札になる予定だったはずです。
しかし予想に反して仲間はマルチェロを無視。彼らはなぜこんな態度をとったのでしょうか。
同じ穴のムジナ
今まではシモーネに脅されて犯罪に手を染めていたため、マルチェロは同情される立場にありました。
しかし彼が自分の意思で殺人を犯したとなれば話は別です。もはやマルチェロもシモーネと同じ犯罪者。
今までシモーネに対して「いなくなって欲しい」と思っていた人達から、今度はマルチェロも「いなくなって欲しい存在」になったと考えられます。
みんなが厄介に思っていたシモーネを殺したからといって、マルチェロが英雄扱いされるわけではないことが分かった瞬間でした。
別世界の存在
もしマルチェロが悲しみに打ちひしがれながらシモーネ殺害を告白したら、仲間の態度も違ったかもしれません。
シモーネの圧力に耐えられず殺してしまったけれども、それは不本意だったと言えば慰めてくれる人もいたでしょう。
ですが彼は弱い立場にいることに嫌気が差して殺したのですから、みんなのために殺したのではありません。
自分は強いんだという証明をしたいがために、仲間に言いふらしたかっただけです。
それではシモーネと同類ですし、善良な市民である仲間とは別世界の存在といっていいでしょう。
マルチェロの声が聞こえていない様子なのは、シモーネを殺すことで住む世界が変わってしまったことを表現しているように見えます。
もうマルチェロは以前のように仲間と戯れることはできないでしょう。
マルチェロのその後
シモーネ殺害後、仲間に無視されたことからわかるように、彼はもう今までの生活に戻る事はできないでしょう。
また刑務所から出てきても、殺人者というレッテルは消えないはずです。
仲間とは縁が切れ、娘とも面会させてもらえないと考えられます。
マルチェロはまるで飼い主に見捨てられた犬のように、街を徘徊して死に場所を求めるしかないのかもしれません。