母・レイリーの遺書にあった「楽しく過ごす」を勘違いして葬儀にカラフルなスーツで出てすらいるのです。

またジャックからレリアンの骨折を放置したことを虐待呼ばわりされるなど枚挙に暇がありません。

挙句自分の教育方針が間違っていたのではないかとさえ自問自答した程で、決して全面肯定はされていません。

正に自分の家の常識は外の家庭の非常識、そのことをベンは思い知らされることとなりました。

決して完璧な父親であったわけではなく、北西部の都会暮らしの中で相対化されていきます。

子供が独り立ちしていく理由

「甘え」と「独り立ち」の心理―人に寄りかからない生き方

そんなキャッシュ一家はベンの思いとは裏腹に物語の中でどんどん自立していきます。

果たして彼らは何を思ってベンからの独り立ちを果たしていこうとするのでしょうか?

父から継いだ自負心

アンタッチャブル 父と息子の事業継承物語

上述したベンの教育方針から考察すると、子供達が父から一番受け継いだものは自負心です。

全ての物事は自力で掴まなければならない考えがあるからこそ、父離れも早くなりました。

それが最初に出たのが母の葬儀に出られないとベンが行ったときに全員で反対した時です。

ここで子供達は初めて父に逆らうことを覚え、そこから父に意見するようになりました。

ハーパーは母が自殺した件で教育上何でも正直であればいいのではないと反論しています。

決して感情的な反抗期ではなく、筋の通った自立であるのが息子達に受け継がれているのです。

学校生活でしか得られないものがある

トム・ブラウンの学校生活 (上) (岩波文庫)

ハーパーの勧めで学校生活をし始めた息子達の中で長男は大学受験をレスリーの勧めで行っています。

この描写が何を意味するのかというと学校生活でしか得られないものがあるということです。

学校という場所は個性のまるで違う子供達が集団生活を一日8時間程する中で様々なことを学びます。

今では従来の学校教育が全てではありませんが、それでも学校でしか学べないことはあるのです。

ベンが息子・娘達に身につけさせた技術や知識は間違いではありませんが、共に学ぶ楽しさがありません。

やはり学友と共に過ごすことで勉強もまた違うものとなるし、大学進学もそこでしか学べないことがあります。

だからこそベンの教育を十分に身につけた子供達が次のステップに学校を選ぶのは自然な流れなのです。

母との別れ

朝の別れを―ヒロシマ、母と子の物語

しかし、そんな息子達だって決して家族を蔑ろにしているのではなく寧ろ母の葬儀の為に一度戻ってきています。

これは母が望んだとおりの葬儀を行うことで、息子達もまた母から自立出来ると考えてのことでしょう。

二度目の葬儀はやや不謹慎でありながらも楽しさに満ち溢れ、決して後ろ向きの悲壮感がありません。

そのような悲壮感のない爽やかな前向きさが息子達の自立を決して寂しくはない明るいものにしているのです。

そしてこれらが子供達の新生活へと繋がっていくことにもなります。

新生活が始まった真意

そしてベンからもレスリーからも独り立ちを果たした子供達はそれぞれに違う道を歩んでいきます。

ボウはアフリカへ一人旅に出て自家用車は鶏小屋となり、残りの子達も学校に通い出します。

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