彼らはただ、周りの人が誰もやったことない大それたことをした経験が欲しかっただけだと思われます。
そう考えると成功した場合、やめるきっかけがつかめずに悩んでいたかもしれません。
今回の強盗でスペンサーは満足しても、金が欲しいだけで参加したメンバーはまた強盗をしようと言い出すでしょう。
罪の意識にさいなまれるメンバーと、そんなことは関係なくお金が欲しいメンバーに分かれ、内部分裂を起こすのは目に見えています。
だとしたら今回逮捕された方が全員のためになるかもしれません。
無意識にそんな思いが心の中を駆け巡ったからこそ、ヘマをして逮捕される結果をもたらしたのではないでしょうか。
出所後のスペンサーが鳥の絵を描く理由
鳥の画集を盗んで逮捕されたのに、スペンサーは懲りずに出所後も鳥の絵を描いています。
逮捕されたのですから、思い出したくない過去になってもおかしくないのに、なぜわざわざ鳥を選んだのでしょうか。
解放されたい欲求
鳥は動物の中で唯一空を飛べる生き物。国境も関係なく陸も海も彼らの行く手を阻むものはなく、鳥は自由です。
きっとスペンサーは何かに縛られていて窮屈に感じていたのでしょう。
窮屈といっても物質的な束縛ではなく精神的なものだったと思われます。
スペンサーとしては観衆が求める絵ではなく、自分が描きたい絵を描いて有名になりたいと思っていたようです。
であれば求められる絵を描かなければいけない状態は束縛以外の何ものでもありません。
自分の好きな絵を描き有名になることで、彼は自由になれると考えていたのでしょう。
だからこそ自由の象徴である鳥を描き続けたのだと思われます。
輝いていた当時
生き方に疑問を感じモヤモヤしていた日々を打開したのは、強盗という犯罪でした。
彼にとって強盗は悪いことである以上に、人生を輝かせたものだったのではないでしょうか。
もしそうならば鳥の絵は最も生き生きできた瞬間の象徴でもあったはずです。
だから鳥の絵を描いていると、当時仲間たちと興奮しながら強盗の計画を立てた日々を思い出すのではないでしょうか。
それはまるで青春時代に聴いた曲を、大人になってから聴き直して当時の思い出に浸っているようなものだったのかもしれません。
客観的に見れば人生の汚点なのですが、本人からしたらまぶしい青春だったといえるでしょう。
鳥の絵を描いていれば、良い思い出が色褪せずに済むと思ったように見えます。
まとめ
あまりにもバカバカしく、実話であることに驚かされる作品ですが、当時の彼らは大真面目に取り組んでいたわけです。
強盗自体は許されざる犯罪ですが、彼らの犯罪は悪意ではなく人生の迷いからきているといえます。
その気持ち自体は多くの人が経験しているでしょうし、彼らを全否定するのは早いのかもしれません。
自分の殻を打ち破るのに必死だったスペンサー。
しかし考えた結果が「犯罪」というのは、あまりに安易すぎて凡人レベルです。
他者に幸せな驚きを与える何かを成し遂げて初めて、彼が願った名誉が手に入るのではないでしょうか。