出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B08443J9D2/?tag=cinema-notes-22

映画『エスケイプ・ゲーム』は2019年公開のベルギーホラー映画です。

日本では「未体験ゾーンの映画たち2020」にて初公開、ジャッカス・クルーガー監督の指揮の下製作されました。

主演のルーカスをチャーリー・パーマー・ロスウェルが、そして助演のクロエをロクサーヌ・メスキダが演じています。

物語は謎の主催者が仕掛ける”パラノイア”という命がけの脱出ゲームへ挑む男女のスリルが見所です。

本稿では主に母とクロエの遺体の意味をネタバレ込みで考察していきましょう。

また護送車のマスク男の正体やクロエがゲーム参加を迫った理由なども併せて見ていきます。

“自分”と向き合う物語

望む人生を手に入れる「自分」との向き合い方。

本作はルーカスとクロエが部屋から脱出するパニック映画の体裁を取っていますが、本質はまるで違います。

脱出ゲームやホラー要素はあくまでも飾りに過ぎず、中身を見ていくと“自分”と向き合う物語です。

ルーカスとクロエはゲーム会場からヒントを貰いながら進んでいきますが、途中で違和感を覚えます。

そうして最後まで辿り着いたとき、ルーカスとクロエは自分の中に隠された闇の真相に気付くのです。

こういったホラー映画だと近いのはマーティン・スコセッシ監督の「シャッターアイランド」でしょうか。

一見パニック映画の構造を持ちながら終盤に向けてそのからくりと正体が解き明かされるのです。

そのような一種のどんでん返し映画の系譜に当たるといえ、ややメタ構造も含みながら見ていきましょう。

母とクロエの遺体の意味

遺体―震災、津波の果てに―(新潮文庫)

本作の象徴といえるのがラストシーンでルーカスの家の地下室に横たわっている母とクロエの遺体。

果たしてこの二つの遺体をこのような場所に横たえていた意味は何なのでしょうか?

籠の中の鳥たち

カゴの中の鳥

このシーンに象徴されているのはルーカス達が全員籠の中の鳥であるということです。

クロエを傷つけ去らせたのも、そして母を地下室で殺したのも実はルーカスでした。

即ち主人公のルーカスこそが天才故に孤独で、更に本作で一番狂っていたことを示しています。

一番真っ当だと思われていた青年こそが実は一番危険であり、かつ誰もこの籠から抜け出せません。

脱出ゲームとしておきながら、実は誰一人本当の意味で脱出出来た者など居ないのです。

クロエの遺体は二通りの解釈が可能

解釈学 (文庫クセジュ)

この中でクロエに関しては実は二通りの解釈が可能であることが示されています。

それはクロエがこのゲームに関係なく殺されたのとゲームの中で殺された解釈です。

どちらにしても殺したのはルーカスなのですが、何故彼女は殺されなければならなかったのか?

きっとクロエはルーカスにとって母の面影がありながらも、母から自立させる女性だからでしょう。

だからルーカスは何が何でもとクロエに固執し、彼女を自分のものとしたかったのです。

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