彼がいない人生は死んでるようなものだから、今だけ精一杯生きられればいいのだとお互いに考えたのではないでしょうか。
濃縮された時間
もし彼らの関係に終わりがなく、60年80年先も一緒にいられるとしたらどうでしょう。
これほど激しく痛みを伴う恋をしたでしょうか。
まだまだ先があると思ったらゆっくりと愛を確かめ合い、穏やかな生活を送っていたかもしれません。
しかし6週間という期限付きだからこそ誰にも目もくれずに愛を貫くことができたと考えられます。
季節
夏は人を解放的にさせる力があります。その力は期限が決められた二人の仲を近づける役目も果たしていました。
秋になれば夏の好奇心は薄れて、冬への準備をすることになります。夏の終わりが彼らの関係の終わりを告げました。
彼らが出会ったのが夏という1年の中で1番輝く季節だったことも、彼らの恋が美しく輝いた要因といえそうです。
オリヴァーの心
秘密の合言葉のように自分の名前で相手を呼ぶ二人。これを提案したのはオリヴァーでした。
オリヴァーの情熱
エリオが積極的にアプローチしているように見えて、実はオリヴァーの方がこの恋に真剣だったのかもしれません。
感情的になるエリオとは対照的に大人な対応をしていたオリヴァー。
作中は終始エリオ目線でカメラが回っていたこともあって、知らぬ間に私達はエリオの揺れ動く恋心に同調していたのでしょう。
しかし映画のタイトルがオリヴァーのセリフだったことを考えると、もっとオリヴァーにフォーカスすべきかもしれません。
婚約者はエリオの代用
アメリカに帰ってから女性と婚約したことからも、オリヴァーは自分の立場を考えてエリオとの関係を清算したように見えます。
ですが別の方向からオリヴァーの心情をのぞいてみると、そこまで冷静だったとはいい切れないようです。
エリオへの情熱を断ち切れないオリヴァーは、婚約者の女性で心の穴埋めをしたのではないでしょうか。
以前エリオもオリヴァーへの想いを忘れようとしてマルシアを求めたことがありました。
同性への愛が禁じ手となっている以上、異性へ愛を向かわせるしか方法がなかったのです。
オリヴァーが婚約したのはエリオへの愛が永遠に冷めないことを確信していたからかもしれません。
余韻を残す美しさ
当時の時代背景を鑑みても、LGBTが今ほど受け入れられている世の中ではありません。
「終わりが見えている恋」に様々な美しさを込めたことによって、この作品の世界が観る者の心に残るのでしょう。
青春という儚い時間だけ見える恋の美しさ・純粋過ぎる想いの美しさ・そして彼らに関わる人々の愛の美しさ。
そんな視覚化されない美が世界観を紡ぎあげているのです。