本気になったりしない。
引用:NANA2/配給会社:東宝
そんな気持ちがその後様々なすれ違いを生むことは、この時のハチは知る由もありません。
彼女の人間関係を考えずに行動するあたり、この時のタクミはハチに対して愛や恋という感情を持っていなかったのでしょう。
負けず嫌い
トラネスの打ち上げ後、タクミがハチに会いに行ったのはノブとシンとの会話がきっかけです。
打ち上げの中でハチと関係を持ったことを告げたタクミは、レンに叱咤され、ノブに詰め寄られます。
剣呑な雰囲気で立ち去るノブとシン。
シンは去り際に、グラスの酒をタクミにぶっかけて立ち去ります。
ブラストの2人の行動はタクミの心に火を付けます。
カッとなったタクミは、そのまま打ち上げを抜けてハチの部屋へと現れます。
ちょっとした遊び相手だと思っていたハチを二人が大事にしていたことから、ハチに対しての気持ちが変化したのでしょう。
ハチを手に入れたい、ノブとシンにやり返したいという感情がタクミの行動原理になったのです。
俺のものになってよ…
引用:NANA2/配給会社:東宝
2度目の逢瀬で告げられたタクミの言葉は、ハチ自身に向けられた反面ノブやシンに対する反抗の意味もあったのではないでしょうか。
ノブの純粋な愛情
明るく人懐っこいノブは、タクミの存在を知った上でハチとの恋愛を始めます。
タクミとの関係を清算したハチとの関係は理想の恋人同士でした。
根が真面目でやさしいノブは、いつも身近にいて等身大の恋愛ができるハチの理想の恋愛相手です。
豪華なホテルは無くとも2人の間には優しく幸せな日々がありました。
タクミさえ居なければノブとハチは理想のカップルのまま幸せを掴めたのでしょう。
妊娠の発覚で崩れる人間関係
全ての人間関係が崩壊したきっかけはハチの妊娠発覚です。
妊娠が判明した時のハチの恋人はノブですが、お腹の父親候補はタクミとノブの両方でした。
誠実なノブがしっかりと避妊していたのに対し、タクミは避妊せずにハチと関係を持っていました。
(「NANA」は原作に忠実に映像化されているため、映像で具体的な表現は入ってこないものの原作読者であれば分かる内容になっています。)
ハチは妊娠についてタクミとノブとの話し合いを泣いて通しますが、翌朝にはタクミの子として子供を産みたいと告げます。
この発言から、妊娠を知った段階からハチのお腹の子はタクミの子だという確信があったのでしょう。
ひさびさの出会いからのプロポーズ
タクミはハチの決意を聞いた直後あっさりとプロポーズします。
ハチに対する愛情とトラネスの利益を考えた発言ではあるものの、ハチへの責任の取り方は女として感動を覚えるシーンです。
結婚という夢がかなうと思っていなかったハチは目を丸くし、タクミの言葉を受け入れます。
ノブを傷つけながらも、ハチは女としての幸せを手に入れたのです。
裏切者
ハチは、タクミのプロポーズを受け入れてからナナとのシェアルームを出ます。
タクミとの新居に移り新たな生活を始めるのです。
何も語らず全てをタクミに語らせるハチは、自身をナナやノブ、ブラストに対しての裏切り者と位置付けます。
彼女の中の罪悪感が自身を攻めないとやりきれなかったからでしょう。
ハチはそのまま、自身を裏切り者としてブラストメンバーと距離をとります。
ナナと過ごした部屋から姿を消し、自分から連絡を取ることはせずに新たな環境に順応しようとしたのです。
お揃いのイチゴのグラス
ルームシェアを始めるに当たり2人で買ったイチゴのグラスには、二人の姿が投影されています。
たびたびピックアップされるグラスは、2人のナナの行動に合わせてその姿を変えていきます。
壊れるなら2人で
ハチの妊娠の発覚後、ナナは机の上のグラスを落として割ってしまいます。
ナナのショックが現れているシーンであると共に、2人の関係の崩壊がよく伝えられている部分でもあります。
さらに、割れたグラスは関係性の崩壊と共にナナの感情が壊れてしまったことも表しています。
自分に一度も話しかけないハチに対し覚えた孤独感や疎外感。
それは、ナナの心にぽっかりと穴をあけてしまったのです。
ナナは壊れたグラスの上に重なるようにもう1つのグラスを落として割ってしまいます。
このメタファーは、壊れた自分に壊れたハチを重ねて1つになるナナの願望を表現しているとも受け取れます。
ほら、もう悲しくない
引用:NANA2/配給会社:東宝
2つのグラスが割れた後につぶやいたこの言葉は、2人で一緒に居られないのなら2人で壊れてしまおう。