即ち相手のテリトリーで殺すつもりが自分のテリトリーに入られてしまいました。
女にとってサラが自身の改築中の家に逃げ込まれたことは誤算だったのではないでしょうか。
流石にこうなると誤魔化しようがなくなり、仕方なく説明する選択をしたと思われます。
無線で助けを求められた
二つ目にサラが咄嗟に逃げる為に乗ったパトカーの無線で警察に助けを要請していました。
これもまた女にとっては想定外の動きで、彼女は自分の計画が破綻しないように警官二人を殺したのです。
ところがそれを復讐の対象であるサラにぶち壊されたために、なりふり構っていられなくなりました。
即ち自身のテリトリーに入れられたことと警察への救援要請で完全に女に逃げ場はなくなりました。
この二段構えで作劇として女をしっかり追い込んでいることも説得力を持たせています。
大量殺人
そしてまた警察のみならず、女はそこまでにアイザックやブライアン、ドノヴァンなども殺しています。
これだけ多くの人を殺しておいて例え赤ちゃんを手にしたとしても逮捕どころか死刑を免れないでしょう。
運良く死刑を免れても意図的にこれだけ多くの人を殺せば終身刑辺りは行くものと思われます。
恐らくこうやって大量に人を殺したこともまた女にとっては予想だにしなかったことだったのではないでしょうか。
こう考えると動き自体はスマートでも全体を見据えた戦略的思考は今ひとつのように思われます。
天網恢々疎にして漏らさず
ここまで見ていくと、サラにしても女にしてもこの事件からは“天網恢々疎にして漏らさず”という教訓が窺えます。
天の目は一見粗いようでいてその実悪人が行う悪事はいつの日か白日の下に晒されるということです。
サラの起こした交通事故や誤っての母親殺し、そして女の大量殺人にサラの監視など全てが明るみとなりました。
サラは最終的に生き延びて赤ん坊を出産しましたが、母を殺した罪からは逃れられないでしょう。
人間何か悪いことをしたら正直に告白・懺悔をして謝罪を行った方がいいことは間違いありません。
「屋敷女」と違ってサラは生き延びたとはいえ決して明るい未来はないでしょう。
予測可能だが回避不能
本作は原作の「屋敷女」と違った部分もありながら、殆ど予想通りに物語を進めました。
ホラー映画としては意外なほど変わった展開や奇抜なスプラッター描写などがあるわけではありません。
しかしその分サラと女を中心に心理描写を強化し内実を充実させることで飽きさせない工夫を凝らしました。
落ちは予測可能だが運命自体は回避不能、本作はそうした作りのジェットコースターではないでしょうか。
その上で事故の責任は決して女だけじゃなくそもそもサラの方にもあったことで後味の悪さを残しています。
この辺りの悲劇のカタルシスと共に残るモヤモヤのバランスがいいリメイク作となりました。
予測通りがつまらないわけではないとエンタメの面白さ・深さを思い知らせてくれた良作です。