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『マイセン幻影』を手掛けたジョルジュ・シュルイツァーが監督を務めるサスペンス映画「ザ・バニシング−消失−」。
ある日突然恋人が失踪しますが、レックスは彼女の生死よりも真相を知りたいと強く願います。
作品最大の謎は、なぜ犯人はサスキアを連れ去ったのか、そして彼女に何をしたのか。
果たしてレックスは真実にたどり着くことができたのでしょうか。
今回は、犯行動機・なぜコーヒーを飲んだのか・閉じ込められたレックスの叫びの意味を考察します。
犯行動機
サスキアを誘拐・生き埋めにしたレイモン。
殺人が犯行動機ではないようですが、それではなぜ彼はこんな犯行をしようと思ったのでしょうか。
自分の正しさを証明した
レイモンは自分の正しさを証明するために入念にシミュレーションをしました。
睡眠薬の時間を測ったり大声が届く範囲を確認したり、この作業と「正しさの証明」にはどんな関係があったのでしょうか。
例えば数値を測定するだけの実験には感情が伴わないのと同様に、レイモンにとって誘拐・生き埋めには感情は不要だったのでしょう。
普通、殺人には「殺したい」「殺さなければならない」という感情が働いていると考えられます。
しかし生き埋めにすることで、穴を掘る・埋めるだけの単純作業しか要りません。そこに感情は一切必要がないのです。
行為自体は悪だけれども、犯人の心には悪がない状態。悪事を働くには悪の心が必要だとはいえないという証拠です。
これは殺人以上に残酷な「生き埋め」をしても、犯人であるレイモンの中に悪の部分が無いことの証明になります。
レイモンは自分の正しさを証明したいがために、サスキアを誘拐・生き埋めにしたのです。
社会への抵抗
レイモンは自分の頭脳に自信があったように見えます。確かに大学教授ですから頭は良いのでしょう。
しかし世間の常識とはズレた考えを持っていたレイモンは、自分が間違っていると認めたくなかったのかもしれません。
自分は正しくて、世間が間違っている。そう強く信じていたのではないでしょうか。
反社会性パーソナリティ障害だと本人は認めていましたが、彼としては「社会とは何だ」という根本的な疑問もあったのかもしれません。
自分の社会は自分の中にあり、誰にも何も言われる筋合いはないと考えていた可能性もあります。
だからこそ世間でいう「社会」に対する抵抗として自分の正しさを証明したかったのでしょう。自分が正しければ自分の中の社会も正しい。
であれば間違っているのは世間の常識だという主張をするための犯行だったといえるでしょう。
レイモンが語った自伝
レイモンは自分についてレックスに語り出しました。なぜ被害者遺族であるレックスに、自分の話を聞かせたのでしょうか。
理解されたい
反社会性パーソナリティ障害であるレイモンは、疎外感を常々覚えていたのではないでしょうか。