1人の人間として愛し愛されたいという欲求が研究の源になっていて、それがテレポッドという形で具現化されたと考えられます。
独占欲と支配欲
テレポッドは彼の人生の集大成であり、彼自身といっても過言ではありません。
その中に入るということは、彼のコントロール下に置かれるのと同じ意味を持ちます。
テレポッドは独占欲と支配欲の塊です。
だからこそパーティー会場で男性記者でなく女性であるヴェロニカに声をかけてテレポッドを披露したのだと考えられます。
猿の実験はなぜ失敗した?
ベロニカに見せた猿の転送実験では、皮が裏返った無残な姿になってしまいました。この失敗の原因は何だったのでしょうか。
愛を知らなかったから
ずっと1人でコンピューターと向き合ってきたセス。無機物に対して優れた能力を発揮するコンピューターとセスは似ているのかもしれません。
つまりコンピューターが有機物の認識を不得手とするのはセスが生き物、特に人間を理解できていないことを暗示しているのではないでしょうか。
そう考えるとこの実験の課題は、セス自身の問題といえるでしょう。彼が人間と対峙することがこの実験の大きな鍵を握っているのです。
有機物の転送実験でのつまずきは、セスを有機物である人間との関わり合いを促すきっかけだったのかもしれません。
猿の実験で失敗したのは、セスがまだ愛を知らなかったことが原因だったといえるでしょう。
実験の現実的な壁
1人で研究してきたセスにとって、生き物を用意することは資金的な面からしても大変だったのではないでしょうか。
また無機物と違って失敗したら可哀想だという思いも持っていたのだと思われます。
生き物をそう簡単に犠牲にできないという考えから、有機物の転送実験は頻繁に行うことは不可能だったはずです。
実験は回数を重ねないと結果がもたらされません。金銭面でも精神面でも猿の実験は、彼の頭を悩ませていたのではないでしょうか。
ハエ男になった原因
実験のお祝い中にステイシスの元へ向かったヴェロニカ。彼女の行動は浮気を疑われても仕方がないでしょう。
初めて嫉妬という感情を持ったセスはどうしていいか分からず、シャンパンをがぶ飲みします。
しかしなぜそこでセスは装置に入ったのでしょうか。
装置は自分を守ってくれる殻
研究に人生を費やしてきたセスにとって、装置は自分を裏切らないことを知っていたのではないでしょうか。
その装置は大きく硬く、彼を守ってくれる殻の役割も担っていたのかもしれません。
装置に入ったことは、嫉妬で傷ついた彼が人間に心を閉ざす姿を現しているように見えます。
人間を理解できなくなったセスは、有機物の猿の転送実験を失敗し続けてきた以前の彼に戻ってしまったようです。
だからこそ成功するはずの自身の転送で失敗してしまったのではないでしょうか。
ベロニカによってもたらされた成功はベロニカによって失敗に終わったといえるでしょう。
成功すれば彼女が戻る?
彼の拠り所は実験だけでした。それに実験の成功によって科学者としてのステータスも手に入ります。