とはいえ、これすらも最終的には全て人道的解決へ軟着陸させるための前振りでしかないのです。
ヒーリーは奪い合いの末にボーイを殺そうとしましたが、ホリーの忠告によりすんでの所で踏みとどまりました。
しかも取り調べの末にマーチとヒーリーは無罪放免で許されてしまうのですからそこまでの盛り上げが台無しです。
しかしコメディとは本来こういうもので、ヒーローもののセオリーで盛り上がるギリギリまでは盛り上げて落とします。
どんなに過程が盛り上がろうとラストで茶化しに変えてこそのコメディなので、落ちまで含めて完璧です。
なのでこの一連のシーンは全てラストで笑いに変えるために丁寧に仕組まれていたと見るのがいいでしょう。
ジュディスの目的
上述したジョン・ボーイら殺し屋の暗躍に裏で一枚噛んでいたのがアメリアの母ジュディス・カットナーでした。
彼女は司法省の職員でありながら同時に裏で犯罪行為に手を染める非常に悪辣な黒幕です。
しかしそれと矛盾するようなアメリアを救いたいということもマーチとヒーリーに告げています。
果たしてジュディスの目的はどこにあったのでしょうか?
汚職を隠すため
ジュディスは分かりやすい悪党ではなく「表向き良い人に見せかけた悪党」という複雑さがあります。
彼女は司法省でありながら裏では自動車産業が環境問題に抵触していることを隠そうと裏で手を回しているのです。
マーチとヒーリーの二人が凄くストレートで捻りがないだけに余計にその悪辣さが印象に残ります。
劇中でもかなり利己的な人間として描かれており、マーチとヒーリーに取り入ったのも情報入手の為です。
一見善人だと印象づけることで裏の悪人顔のギャップが映える構造となっています。
娘絡みで弱くなる
とはいえ、ジュディスが完璧な悪役だったかというと、決してそうではなく彼女にも弱点はあります。
それこそが娘のアメリアで、娘が絡むと幾分私情を見せる為にそれがギャップになっているのです。
ジュディスが優秀な知能犯として描かれながら仕事の為に娘を犠牲にするなど出来ませんでした。
だからこそ「公」と「私」の狭間で戸惑うことになり、ラストの逮捕シーンでもその本心を語ります。
ジョン・ボーイがそうであったようにヒーロー側も悪役側もコメディ要員であるという法則に則ったキャラでした。
部分的勝利は果たしている
とはいえ、完全にジュディスの負けだったかというとそういうわけではありません。
マーチとヒーリーの活躍で彼女が黒幕として逮捕され、更に娘を犠牲にしたとはいえ自動車産業は守られました。
コメディといえど全部が全部ヒーロー側の活躍だけで終わるのではなく、悪に部分的勝利も与えています。
これもまた完璧にヒーロー側の活躍で終えていた70年代アクション映画への文法崩しといえる結末でしょう。
ジュディスはあくまで巨大な悪の一部に過ぎないという非常に納得に行く落としどころになっていました。
アメリアの正体と映画制作の狙い
ジュディスの唯一の弱点として存在していた娘アメリアの捜索を依頼された所から始まっています。
ここではそんな彼女の正体と彼女がポルノ映画制作を通して狙っていたことを読み解いていきましょう。
ポルノ映画女優
アメリアの正体は何とポルノ映画女優であり、しかも司法省職員の娘というこれまたぶっ飛んだ設定です。
面白いのは国家公務員の娘だから品行方正なのかと思いきやアンダーグラウンドに生きている人でした。