秀子が恐れる地下室の水槽にタコが入っていたのをお気づきでしょうか。
上月は秀子に「君はタコによって自由を奪われているんだ」という暗示を強くかけたかったのでしょう。
劇中で実際に拷問にタコが使われていたのか詳しい描写はありませんが、精神的に自由を奪うアイテムとしてタコが登場していたのです。
七日間自由になるが、地下室のことはひと時も忘れるんじゃないぞ
引用:お嬢さん/配給会社:CJエンタテインメント
上月のセリフもタコの存在があるからこそ、効力を発揮するものとなっています。
背景に流れるもの
本作の舞台は1939年の朝鮮半島となっています。
日本統治時代とも呼ばれ、第二次世界大戦が終結するまで日本の長い統治が続いていました。
親日家の屋敷に現れる文化
劇中で上月は親日家として描かれていますが、彼の屋敷は独特の雰囲気をかもしだしています。
日本的であり西洋的な雰囲気も持っているのです。
しかしそこに朝鮮らしさはありません。
この時代は強きもの=日本という背景があり、それゆえ上月は和洋折衷の屋敷に住んでいるのでしょう。
多くの朝鮮人が自らの意思でより良い職を求め内地へと向かい、その後その多くが「在日韓国・朝鮮人」として日本に定住している。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/日本統治時代の朝鮮
舞台となった1939年は日本への移住者も多かったようです。
親日家という日本とのかかわりの深さが、裕福さとイコールだったことを匂わせる部分でもあります。
いいかえれば西洋文化と日本の文化が同時に朝鮮半島へ押し寄せ、朝鮮に元々あった文化を侵食してく時代でもあったのです。
不文のスッキが示すもの
劇中で珠子となったスッキが文字を読めないという描写が登場しています。
当時は貧富の差が大きく、まだまだ学問はいきわたっていなかったと考えられます。
また史実によると不文である人物の男女差も大きく、女性はほんの少数の人しか教育を受けていなかったのでしょう。
ここにも歴史的な男女間の地位の差が見て取れます。
幾重にも重なったストーリーが面白い
『お嬢さん』は同じ時間軸を様々な視点から描いています。
観客は時間の流れと共に、徐々に話の全貌がみえてくるという仕組みなのです。
幾重にも重なった愛と裏切りが、驚きを持って観客に押し寄せてきます。
女性の精神的開放を描いた本作品は、成人指定でありながらも女性からの高い支持を得ており、名作映画として足跡を残しました。
何度も観返し、細かい心理描写を堪能したい作品ではないでしょうか。