つまりエブリンの死こそ、悪魔が狙ったものだとも考えられます。
この状況を作り出せば、ミアまたはエブリンいずれかの魂は確実に奪えるわけで、悪魔はそう誘い出したのかもしれません。
もしもの保障つきの、実に巧妙な悪魔の罠であったのです。
エブリンの死は予見されていた?
実はエブリンが飛び降りることは、映画の始めに予見されていたかもしれません。
それは本作内で初めてアナベル人形が登場したシーン。
ミアがそのアナベル人形を壁に立てかけるシーンに、エブリンの死が予見されているシーンらしきものがあります。
並んだアナベル人形の隣には…
引っ越しする前の家の中の子ども部屋は、たくさんの人形で埋め尽くされていました。
ミアが「ちょうど良い」として、選んだ棚のスペースには二体の比較的大きな人形が並んでいます。
アナベル人形の隣に置かれているその人形は、白人で金髪を後ろでポニーテールのようにして束ねた髪型をしていました。
この人形、実は次作で登場する、存在した少女アナベルの母親であるエスター・マリンズに似ています。
先述したように、マリンズ夫妻は娘のアナベルを事故で亡くしました。
つまりアナベル人形の隣にいるのは「娘を亡くした」母親であるエスターなのです。
そして、エスターと見られる人形の横に座っているのが…
白人金髪の人形の隣にある黒人人形
エスターと見られる人形の隣に座っているのは、黒人で髪の長い人形でした。
つまりこの黒人人形はエブリンを表しているのです。そう考えたとき、アナベル人形の隣にある二体の人形(人物)は共通点があります。
- 娘を失っている
- 悪魔の仕業で自身の魂を奪われた
アナベル人形シリーズの第一作でありながら、冒頭のこのシーンには、今後悪魔の仕業で亡くなる二人の女性が示唆されているのです。
キリストの教義とエブリンの死
エブリンが亡くなった直後、神父のような声のナレーションが入ります。
神は犠牲をたたえます。自己犠牲が神を動かし、救いの手を差し伸べる。
引用:アナベル 死霊人形の誕生/配給会社:ワーナー・ブラザース
キリストの教義として語られるこの言葉は、エブリンが神に救われたこと、そして悪魔はこの教義を逆手に取ったことを意味しています。
結局悪魔から見れば、エブリンの魂を奪うことができたのです。
一方キリスト教では、悪魔と天使の存在が表裏一体の関係となっていることもあります。
エブリンの自己犠牲は、悪魔の誘いによる結果でもあり、神に救われる唯一の手だったのかもしれません。
アナベルシリーズは続く
アナベルシリーズ以前にも、死霊館シリーズなど、さまざまなホラーシリーズがそれぞれに関係性を持ちながら制作されています。
映画の冒頭や最後の場面には、シリーズの映画の一部と思われるシーンもあるため、シリーズすべてが完結したとき新たな発見があるはずです。
日本風ホラーとは違ったヨーロッパ風ホラーが、本シリーズにはたくさん描き出されています。
背景にあるキリスト世界などを熟知すれば、本作『アナベル 死霊館の人形』を違った角度から考察できるかもしれません。