30歳になった自分が自閉症の兄の世話に疲れ始めていたら、もう一度、自分が生まれてきた理由を再確認させようとしているようです。
生まれてきたことの理由
誰でも自分が生まれてきた存在理由を明確に理解することは難しく、15歳の中学生にとっては存在してること自体が曖昧に感じる時期です。
さらに家庭環境や友人関係で悩み生まれてきたことを悲観的に思うこともあるでしょう。
そして15歳位の子の自己への過大評価や思い描いていた夢や理想が、時間の経過や環境の変化によって崩れていくことが多にしてあるのです。
一方サトルは自閉症の兄がいることで、環境や時間に左右されることなく生きていく意味を今以上でもそれ以下でもないと理解しています。
先生は生きている意味って考えたことありますか?
引用:くちびるに歌を/配給:アスミック・エース
そして、ユリの自家用車でのサトルがしたこの問いかけは、生きている意味を見失っていたユリの心を揺さぶったのです。
生まれてきたことへの感謝
サトルは兄の送り迎えがあるため中学2年間を部活にも参加せず、友達も作らず目立たいよう平凡に3年生に進級しました。
そんなサトルがひょんなことで合唱部へ入部したことで意識に変化が現れます。自分の歌声が周囲に認められ歌う喜びに目覚めたわけです。
また、部活をやることは生まれて初めて自分の意志で決めたことで、初めて“仲間”も得たのです。それはサトルにとって大きな自信になりました。
つまり未来の自分へ宛てた手紙が書けたことは、兄や両親へ生まれてきた感謝の気持ちと将来への決意がはっきり抱けた証でもあるのです。
船の汽笛の意味とは
サトルの兄アキオは機嫌の良い時に船の汽笛を真似します。サトルは兄の“機嫌が良い時”と思っていますがそれには理由があります。
長く伸ばした音が二つで出発の合図
ナズナ、泣かんとよ…前進前進…あんたがおってくれて本当によかった。ありがとう
引用:くちびるに歌を/配給:アスミック・エース
仲村ナズナの母は教会のオルガンの「ド」の音は船の汽笛の音と教え、船の汽笛の音の意味を教えながら泣きじゃくるナズナを励ましていました。
その時オルガンの近くで一人遊びをしていたアキオがいて、その2人の様子を聞いていたのです。
アキオはなぜ船の汽笛をマネる?
教会での記憶
ナズナが蒸発した父親との関係で心が乱れている中、無事に合唱コンクールが終了した後にピアノのドを叩きながら心を落ち着かせています。
アキオがナズナに母親が励ましてくれた言葉で声をかけた時に、2人が幼い頃に教会で出会っていたことをナズナは思い出しました。
「ナズナ、泣かんとよ…前進前進…あんたがおってくれて本当によかった。」
「ボォーボォー…ボクは?」