それを強制的に引き起こそうとするのですから、無茶としかいいようがありません。
憑依型にさせる
そして三つ目に覚醒させてゾーンに入らせることでビアンカ達を全員憑依型にさせようとしたのです。
役のために敢えて自分を消して近づけていく、彼女達の素はどこにも残っていません。
また、ここでもう一つ役への偏見をなくすためにアルマは敢えて何役かを伏せていました。
もしここで役名を最初に出してしまうと役作りの段階で余計な下調べをして勝手に役を作られかねません。
役作りにおいて大事なのは自分らしい役作りよりは監督や演出の求める役作りであるといわれます。
だからアルマの主張は間違っていないのですが、それが後々にとんでもな悲劇を生み出すことになるのです。
眠らないことで本番に起こったこと
こうしてずっと眠らない形での稽古を繰り返していたビアンカ達は無事にこの108時間の断眠を乗り越えました。
しかし、舞台は本番まで何が起こるのか最後まで分からず、予期せぬアクシデントも有り得ます。
果たしてビアンカ達がどうなったのかをじっくり読み解いていきます。
幻覚を見る
まずビアンカが追い詰められて命を断ってしまったドラの幻覚を見るようになりました。
更にその結果セシリアが襲いかかってきたと勘違いして錯乱し暴れてすらいます。
このことをアルマは役が憑依したとして主役の褒美としてスリッパを渡したのです。
ですが、これだけで済めば良い方でビアンカは何と火事で焼けたと思った部屋へ行ったりします。
このように見えないはずのものが見えてしまうという幻覚と禁断症状を発したのです。
が、これはビアンカだけではなく他の役者達にも違った形で襲いかかります。
自殺しようとする
二人目がマーリーンであり、彼女はサブリナに憑依された結果自殺願望に駆られます。
役作りといえばそうなのですが、マーリーンはそれで命を落しかけたのです。
いってみれば臨死体験にも近いものがあり、何とか観客がいたことで救われました。
このように自殺願望までをも覚醒させてしまうという非常に恐ろしい効果があるのです。
明らかにここまで行くと役の範疇を超えてしまっており、取り返しのつかないことになります。
とはいえ舞台は成功
このように禁断症状は出ましたが、舞台そのものは病院全体を使ったこともあり大成功を収めます。
観客達は廃墟と化した病院内に隠れてずっとこの芝居を見守る形でいたのです。
これぞ正しく本当の意味での参加型舞台だったのではないでしょうか。
アルマの取った方法はハイリスクハイリターンで、危険を承知の上で大成功を収めようとしたのでしょう。
しかし、ここまで役者達に無理強いをして作られた舞台が最後にとんでもない恐怖を引き起こすのです。
その先にある恐怖
舞台そのものは確かに一定の成功を収めたものの、ビアンカをはじめ役者達に強いた負担は大きいものでした。
成功裏に幕を閉じたものの、アルマ達には更なる悲劇が待ち受けていました。
果たして108時間の断眠という無理無茶無謀の先には何があったのでしょうか?