実際に、映画ラストでアドニスの語りが入るシーンでは、再び息子と今度は一緒に走っているイワンがいました。
つまり「次」の試合に向けて、また歩み始めたのです。ロッキーやアポロの二の舞にならないこと。
これはロッキー自身だけでなく、イワンに対しても言える教訓なのでした。
アドニスへの説教が自分に跳ね返る
映画終盤で、ロッキーはあれだけ躊躇していた息子の家へ向かいます。
なぜロッキーがそうしたのかというと、アドニスに説教しているうち、アドニスに対して言っている言葉が自分にそのまま跳ね返るからでした。
一体、アドニスへのどんな言葉が自分に跳ね返ってきたのでしょうか。
ハートで負けたのは自分も
先述したように、アドニスが負けた理由として、ロッキーはアドニスのハートが負けていたことを指摘しました。
それこそシリーズの中で、何度ダウンを取られても不屈の精神で立ち上がり続けたロッキーです。
しかし確執の生まれている息子に対しては、ハートが負け続けていました(『ロッキー・ザファイナル』では戻ったように見えましたが)。
確執が生まれたと言っても親子です。間違いなく息子は、ロッキー・バルボアと妻のエイドリアンから生まれた子。
アドニスに説教する「負けるな」という不屈の心は、自分自身の行動にも当てはまります。
だからこそロッキーは、負けない心をもって息子のところへ行ったのです。
子が生まれる喜び
ストーリーの中で、ロッキーが息子に電話しかけた場面がありました。それはビアンカが、もうすぐ赤ちゃんを産むというところです。
病院に向かう道すがら、父親としてどうすべきかアドニスは悩んでいますが、そこにロッキーはアドバイスを送ります。
落ち着け。大丈夫だ。そばにいてやればいい。今日は人生で最高の日だ。
引用:クリード 炎の宿敵/配給会社:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
興奮するアドニスを見ているロッキーは、アドニス同様興奮しているようにも見えました。
つまりアドニスとビアンカの子どもが産まれることを通して、自らが息子のロバートと出会った時のことを思い出したのです。
そうして「ロバート」と書かれた手帳を広げ電話しようとしますが、結局できません。
しかしビアンカの出産が、ロッキーの心の中で息子に会う一つのきっかけになった出来事であることは、間違いないでしょう。
大切なものは何か。
アドニスが落ち込んでいる時、ロッキーはアドニスに本気で心のケアを行います。
俺と同じ過ちを犯して欲しくない。分かるか。自分に問え。大事なものは何か。
引用:クリード 炎の宿敵/配給会社:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
ここではロッキーは、アドニスに戦うことの理由付けとして「自分自身のため」「家族のため」と考え出させよとしていました。
しかしこの「大事なものを自分に問う」というセリフは、自分に返ってきます。
アドニスに出させようとしている言葉は、自分にも当てはまる言葉です。
ロッキーの家族のために、ロッキーは戦い続けなければなりません。エイドリアンはもう亡くなりました。
しかし息子のロバート、そしてその息子に孫まで生まれました。間違いなくロッキーの家族です。
だからこそ、ロッキーは息子の家へ向かいます。
意味ありげなものが二度登場
本作ストーリーで、何か意味ありげに語られるものがあり、それは二度登場しています。それは、ロッキーの自宅の前の街灯です。
あの街頭、もう何年も壊れたままだ。役所はほったらかし、明かりがなきゃただの棒だ。笑えるけど最悪だな
引用:クリード 炎の宿敵/配給会社:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
実はこの街灯のくだりは、映画のターニングポイントの際に登場しているのです。紹介したセリフは1回目の登場シーン。
このあと、アドニスはヴィクターへの1回目の挑戦を決意します。そして2回目の登場は、ロッキーがアドニスを説得しに行く直前。
間違いなく街灯の話は、本作のターニングポイントを指しています。
ロッキーが目指しているのは、街灯に再びあかりを灯すことです。それは人生で言う所の「希望」のようなものを示唆します。
希望がなければ「ただの棒きれ」なのです。ではロッキーにとっての希望とは何なのか、というと息子や孫のことでしょう。
ロッキーが息子のところへ向かい孫と初対面するシーンには、ロッキーの心の街灯が再び灯ったことを示唆しています。
アポロの孫、ロッキーの孫、時代はつながる…
長く愛されてきた『ロッキー』シリーズから始まり、『クリード』はすでに第二作目に突入しています。
その二作目である『クリード 炎の宿敵』のラストは、墓に入るアポロが孫に会うシーンと、ロッキーが孫に会うシーンで終わりました。
英雄である2人に孫ができたのです。ヴィクターに勝ち、リングを見上げるロッキーはこうつぶやきました。
お前の時代だ
引用:クリード 炎の宿敵/配給会社:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
英雄たちが孫に会うシーンには、一つの時代が確実に終わることを示唆しているかもしれません。
次作がどうなるのか分かりませんが、ロッキーやアポロたちの時代は終わりました(ドラゴはまだ戦い続ける)。