また泰陽に異常なまでにこだわる理由も気になるところなので一緒に見ていきます。
中学時代の幼なじみ
まず咲という人物は泰陽と深月の中学時代の幼なじみというやや複雑な関係でした。
しかも彼女は泰陽の気を引くためにわざわざ好きでもない深月にキスをしてしまうのです。
いわゆる恋愛漫画における小悪魔系のいやらしい女の子担当が本作では咲になります。
そうした事情もあって咲はやたらと泰陽に絡み彼との関係に執着するのです。
星・泰陽・深月の関係性がサッパリしている分ややねちっこいのが咲になりました。
彼女がそのような背景設定を抱えて登場することで物語に重みが生まれています。
手術を受ける決心
咲が泰陽たちに絡んできたのは重病持ちながら先延ばしにしていた手術を受ける決心をするためです。
彼女はその為に本当は中学の時点で泰陽に好きかそうでないかの整理をつけたかったのでしょう。
だからこそ思いっきり振られた後、それまでの鬱陶しさが嘘のように晴れやかな表情を見せます。
これって考えてみたら変な話で、わざわざ過去の恋愛に蹴りをつける必要はありません。
ですが咲にとってはそんな下らない過去の恋愛こそもっとも大事なことだったのではないでしょうか。
つまらないことこそ若者にとっては大事であるということを一番実践したのが彼女でした。
星と深月に自分の本音と向き合わせる
結果論ですが、咲が絡んだことで星と深月もまた自分の本音と向き合えたのではないでしょうか。
星はただ一方的に好いた惚れたを繰り返しながらも自分の本音は煮え切らない状態でした。
また深月もどこか二番手としての自分の立ち位置に甘んじて本音と向き合うことを避けています。
そんな二人に自分の本音と向き合うことの大切さを身を以て示したのではないでしょうか。
結果として星も深月も咲を通して自分の本音に気付き前へ進むようになりました。
咲の影響は三者の関係を揺らしたと同時に本音と向き合う方へと導いたのです。
真っ直ぐ生きる者が勝つ
本作は三角関係を通して結局真っ直ぐ正直に生きる者が勝つことを示しています。
太陽が居るからこそ星も月も輝くのですが、それ故に傷つくことも多いはずです。
ですがそんな者こそが真に他者の為に涙を流し命を賭けられるいい奴なのでしょう。
だから星にとっては泰陽こそが正に自分を輝かせ照らしてくれる太陽なのです。
咲と深月もそんな彼が居たから真っ直ぐ生きることを最後に選択したのではないでしょうか。
自分の本音に蓋をするな
本作のメッセージはどこまでも愚直な「自分の本音に蓋をするな」ではないでしょうか。
咲も含めて四人が物語の中で向き合ったのは自分の本音というか潜在意識です。
高校生になると段々大人の理性が身につきますが、同時に本音を押し殺す邪気にもなります。
だからこそ傍から見たらつまらないことでも全力を賭けられるのはそれだけで尊いのです。
若者の恋愛関係がいつの時代に見ても面白いのはその本音と常に向き合うからでしょう。
そんなエンターテイメントの醍醐味を真っ直ぐに届けてくれる名作です。