本作は飛行機の墜落や機密文書にまつわる陰謀など、派手なアクションが目立ちます。
しかし本質を辿るとそこには様々な「愛」の形が隠されていました。
ジアンの娘に対する愛
「Wings」の隊長ジアンもまた、エベレストで大切な娘を亡くしています。
シャオタイズを自分の娘と重ね、また大切な人を失った自分自身と重ねていたのかもしれません。
だからこそ、親として同胞として下記の言葉を残したのでしょう。
物語の終わりは、別の物語の始まり
引用:オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁/配給会:アスミック・エース
自分が娘の死を引きずっていたことに対して、シャオタイズにはそうなるなと伝えたかったのでしょう。
元恋人の愛「2030」
劇中では恋人がシャオタイズに「2030」の想いを受け取っています。
この数字は赤経を示し白鳥座を示しているのです。
恋人は彼女に次へ進み新しい人生を送って欲しいと願っていたのでしょう。
自分のことを引きずって欲しくない、と願うその気持ちは本当に彼女を愛していたからです。
恋人の想いとは裏腹に命がけで彼に会いに来たシャオタイズ…。
望んだことではないにせよ、彼は本当は嬉しかったのではないでしょうか。
不運な上映作品となった
本作のプロデューサーは「M:I- 2」などを手掛けたテンレス・チャンであり、彼に直々にご指名を受けたのが役所広司です。
エベレストを舞台に壮大なスケールで描かれた『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』ですが、一部では不運な映画とも呼ばれています。
いい映画にもかかわらず、場所にとっては短期間で公開を打ち切られていたのです。
その理由は同時上映された他の映画にあります。
「JOKER」や「アナと雪の女王2」、そして「ターミネーター/ニュー・フェイト」など大ヒット作と被ってしまったのです。
このため本作を見逃してしまったという人も多くいるようです。
派手なアクションに隠れた「愛」に注目
本作は謎深いアクションサスペンス映画ですが、登場人物たちの行動の裏にはそれぞれの「愛」が秘められています。
人を想う愛ゆえの行動なのです。
劇中に隠された登場人物たちの想いに焦点をあてて観返してみると、また違った味わいが生まれてくるのではないでしょうか。
何といってもテンレス・チャンがほれ込んだ役所広司の演技は必見です。