出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00FIZA368/?tag=cinema-notes-22
映画『モテキ』は原作者・久保ミツロウが自ら脚本を書き下ろした、2010年のテレビシリーズの続編です。
大根仁監督の下、主人公藤本幸世の一つの完結編であると同時に森山未來の俳優像も確立されました。
ヒロインのキャストも長澤まさみを中心に錚々たる面子が揃い集大成として盛り上がりを見せます。
童貞を貫き通してきた派遣社員の幸世に迫るみゆきとるみ子の恋愛描写も最後まで見逃せません。
興行収入も22.2億円とかなりの好成績をヒットし、更に以下を代表として受賞しました。
第66回毎日映画コンクール男優主演賞
第16回日本インターネット映画大賞主演男優賞
第54回ブルーリボン賞助演女優賞
第35回日本アカデミー賞優秀主演女優賞・優秀助演女優賞・優秀音楽賞・優秀編集賞・話題賞作品部門
第21回日本映画プロフェッショナル大賞 個人賞・新人監督賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/モテキ#映画
今回は本編ラストでみゆきが幸世の告白を受け入れた理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
またダイスケが幸世を警戒しろと電話した理由やみゆきが飲み会にるみ子を連れて来た意図も見ていきます。
草食系と肉食系の違い
本作は一見幸世が好きな子とそうでない子の二人に振り回されつつ本当に好きな子を落しただけのようです。
しかし、実は本作を通して草食系と肉食系の違いが対比によって炙り出されています。
本作における草食系と肉食系の違いは「行動するか否か」という一点に尽きるのではないでしょうか。
幸世は当時既にアイコン化していた非モテ男子の象徴ですが、彼にも「モテキ」はあったのです。
テレビシリーズでその「モテキ」が来たのに上手く行かなかったのは「行動しなかった」からでした。
「やろうと思った」と「やった」には大きな差があり、テレビシリーズの幸世は行動に移せないヘタレです。
その超えられなかった一線をどう超えるかに挑んだのが本作であり、その点を注意しながら考察していきましょう。
ラストに幸世を受け入れた理由
まず本作最大の特徴にして見所となっているのは長澤まさみ演じるみゆきがラストで幸世を受け入れるラストです。
それまで頑なに幸世を拒んでダイスケに傾いていたはずの彼女が何故幸世に傾いたのでしょうか?
あらすじを整理しつつその理由に迫っていきましょう。
思考と身体の不一致
みゆきに顕著な部分として思考と身体の不一致が挙げられます。要するに顕在意識と潜在意識が全然違うのです。
そのことは前半から出ていて、みゆきは「彼氏がいる」と口にしていながらも幸世の部屋に泊まりキスまでしています。
幾らTwitterで趣味が合って意気投合したからとはいえ、初対面で飲み会を開いてカラオケをした後にキスなど普通しません。
二回目の飲み会では二人の関係が社員達にバレたにも関わらず「帰りたくない」という幸世を自室に招いているのです。
これは明らかな言行不一致であり、表面上幸世を突き放す言葉をかけつつも幸世から迫られると拒否できません。
思考は嘘をつきますが身体は嘘をつかないという人間の心理を見事に体現しており、既に心は幸世に傾いています。
ダイスケに愛想が尽きていた
二つ目は不倫を承知で付き合っていたダイスケに愛想が尽きていたということが挙げられます。
どれだけ尽くしても振り向いてくれず、終盤の電話で彼女はこう告げるのです。
今までそういうことを心配してくれなかったよね
引用:モテキ/配給会社:東宝
そう、みゆきがダイスケと付き合っていたのは人間性ではなくダイスケの社会的地位でした。
その虚しさに疲れ果てたからこそ、ダイスケが妻と離婚しても全く嬉しい顔を見せていません。
本音を偽って付き合った望まぬ関係だったので、幸世が絡まなくてもいずれ破綻していたでしょう。
泥まみれの恋
一見器用な小悪魔なみゆきですが、その本質はラストで幸世共々泥まみれになったことで見えてきます。