価値がないと思われる雑草であってもそこから健康な人を幸せにする食事ができるのです。
それは樹とさやかにもいえることで、さやかはこの後職場で生き生きし始めました。
一方の樹もそんな彼女と時間を共にする中で自分が抱える問題と向き合うことを決意します。
雑草に名前を教えることで二人とも「自分らしさ」を目指していくようになるのです。
レシピも置いていった理由
半年間という条件付きで暮らしていた樹はその約束通り、突然さやかの前から姿を消しました。
しかし、その際に彼は一緒に撮った写真と共に料理のレシピも置いていきます。
果たして何故このようなことをしたのでしょうか?
自炊に困らないように
まず一つ目は独り暮らしをしているさやかが自炊に困らないようにするためです。
さやかは樹と出会う前まではコンビニ食などで済ませる傾向も度々あり、樹がそこを変えました。
しかし別れたからといってまた以前の暮らしに戻られては元の木阿弥でしかありません。
以前のさやかに戻らないようにするために樹は残していったのではないでしょうか。
再会の約束
二つ目に樹とさやかの再会の約束として置いていったと考えられます。
もしこれが今生の別れなら思い出の品ごと全部捨て去っていなくなっても良いはずです。
それをせずにレシピと写真を残していったのは完全な別れではないと示したかったのでしょう。
実際に終盤で二人は再会するのですが、その伏線として機能するという役割を果たしました。
樹は決してさやかのことを無残に見捨てたり切り捨てたりはしてなかったのです。
「ありがとう」という言葉
そしてもう一つ、レシピと共に「ありがとう」という書き置きがあったことも忘れてはなりません。
樹の言葉選びが非常に巧みであることがこの書き置きの言葉からも窺えます。
何せ酔った勢いとはいえお互いに愛情があることを確認し、キスまでした仲です。
今生の別れではなく将来を一緒になるために一時的な別れを選ぶからこそ「さようなら」をいいません。
そしてこの別れは結果としてお互いの心をより強くし、二人はより深みのある大人へ成長したのです。
樹が名前しか教えない理由
樹はバイト先をさやかに見つかるまでは日下部という自分の苗字を一切教えませんでした。
その理由は終盤に彼がさやかの下に戻ってきたときに明らかにされます。
果たして樹は何故頑なに自分の苗字を教えようとしなかったのでしょうか?
華道の道か、自分の道か
樹が苗字を明かさなかったのは彼の家元が華道だったからという家系の問題がありました。
樹が半年間という条件で付き合っていたのは父から貰っていた自分探しの猶予期間だったのです。