ここで龍彦はこまめにケアをしながらも力及ばずで大切な女性を失うという痛みを伴っています。
救いだったのは自殺した栄子の後に出てきたアゲハが再会を約束してくれたことです。
そしてまた落ち込んでいたのを自分がスカウトしてくれた女性達が激励もしてくれました。
女性の存在が龍彦を弱くもし、そしてまた同時に強くもしてくれたのです。
この経験で彼は男としてもスカウトマンとしても大きく株を上げたのではないでしょうか。
中学時代の同級生・秀吉
そしてこれもまた後述しますが、皮肉にも敵として戦うことになる中学時代の同級生・秀吉の存在です。
彼は何と龍彦の強き心に憧れ、ライバル意識を燃やしてハーレムというライバル会社で実績を上げました。
しかも終盤では宿命といわんばかりの死闘を演じ、結果としてまたもや喪失してしまいます。
幸せにすると誓った女性のみならず旧友まで失ったことが彼を人間として成長させたのでしょう。
続編の「新宿スワンⅡ」で更なる躍進を見せる龍彦ですが、この時代の挫折と失敗が糧になっています。
二度と理不尽に社会から抹殺される人を生み出さない為にこそ彼はスカウトを続けていくのです。
アゲハが逮捕を選んだ理由
龍彦に助けて貰い彼のハートを「王子様」といったアゲハですが、彼女は終盤逮捕を選びます。
彼女は何故自分から一度警察のお世話になる道を選んだのでしょうか?
薬物中毒からの解放
一つ目に挙げられるのが薬物中毒という危険な状態からの解放ではないでしょうか。
薬物中毒の一番恐ろしい所は警察に逮捕されることよりもまずはその禁断症状です。
有名な夜回り先生ですら薬物中毒者でドラッグを辞められたのは3割しか居ないといっています。
アゲハは死ぬまで麻薬の誘惑と戦い続けなければならず、このままだと死ぬしかありません。
その最悪の事態を回避するためにもまずは逮捕される道を選んだのでしょう。
龍彦との再会
二つ目にあったのが、上でも触れましたが龍彦との再会です。
自分のことを気にかけてこまめにケアまでしてくれた人生初めての王子様が龍彦でした。
彼女はそんな龍彦に薬物中毒者であることを隠し続ける後ろめたさもあったのでしょう。
だからこそ、彼女は自分自身の意志で麻薬中毒になってしまった罰を己に課しました。
そしてまたいつか龍彦の前に戻ってこられるようにと約束したのです。
結果としてはそれが龍彦にとっては救いとなってスカウトを続けていけました。
その後
本作では描かれていませんが、原作では無事に刑期を務めた後龍彦との再会を果たしています。
つまり交わした約束はしっかりと果たされた格好で、この逮捕は決して無駄にはなりませんでした。
龍彦にとっても薬物中毒に気付かなかったとはいえ、こまめにケアしたことで失わずに済んだのです。
それこそが龍彦にとって最大の救いであり、正に龍彦のヒロインであったのではないでしょうか。
裏社会に生きている故に人並みの幸せは得られないかもしれませんが、後悔のない人生となるでしょう。
喧嘩の末に秀吉を逃した龍彦の想い
そんなアゲハの薬物中毒と逮捕の裏に絡んでいたのが中学時代の同級生秀吉でした。