一見古式ゆかしい母性に溢れていながら、中身は決して男に媚びない自立した格好良さがあります。

原稿が遅れることはあっても料理の腕は一度も落したことがないこともまた魅力的です。

非常に凛とした気高い芯を持っているからこそ、多くの女性達がトン子の元にやって来るのでしょう。

彼女の持つガッツとバイタリティに溢れた自活力は迷える女たちの憧れの的になっています。

ミドリにワインを勧めた理由

全てトリプル金賞 ボルドーワイン6本セット ソムリエ厳選 赤ワイン 750ml×6

本作では前半にツヤコがミドリにワインを勧め口にさせるシーンがありました。

年端もいかない幼児に酒を飲ませるなど絶対にやってはいけないタブーです。

そのタブーを犯してまでツヤコがワインを飲ませた理由は何でしょうか?

ワイン=大人の味

東京・大人の味 赤本 (光文社ブックス 136)

まずワインという飲み物は大人の女性の味として本作では位置付けられています。

少なくとも子供のミドリにワインの味は分からず、苦いものでしかありません。

それを子供に体験させることで大人になることの意味を感覚で分かって貰おうとしたのでしょう。

大人とは決して甘さだけではない、苦さ・辛さ・酸っぱさといった味も知ってこそなのです。

きっと幼少時にしたこの経験はミドリにとって良くも悪くも生きてくるものとなります。

大人は酒で誤魔化せる

デキる男は、なぜバーに通うのか? -大人の粋なBarの愉しみ方-

二つ目に大人の関係自体が酒で誤魔化せるものであることを示しているからです。

ツヤコが味わった夫の不倫と別れはミドリが理解出来るものではありません。

しかし大人になって辛くなった時その寂しさや悲しさを酒で紛らわせる時がやって来ます。

そんな辛さを僅かでも子供のうちから経験させておきたかったのでしょう。

子供に見せるべきは決して夢だけではなく現実の辛さうや苦さも必要なのです。

良い悪いではなく大人とはそういう生き物だということを端的に伝えています。

子供に甘えるツヤコの弱さ

大人になることのむずかしさ (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉コレクション 5)

そして三つ目にミドリに甘えざるを得ないツヤコの弱さを示すためではないでしょうか。

これはツヤコを演じている壇蜜さん自身がインタビューなどでも言及なさっていました。

本当はミドリを毅然と強く引っ張らないといけないのにそれが出来ず甘えてしまっています。

幼児に甘えざるを得ない、男に依存していたツヤコの弱さが情けなさとして描かれているのです。

そしてここで挫けるシーンがあるからこそラストで夫を損切りしたツヤコの強さが引き立ちます。

元夫を驚かせたマチルダの変化

変化できる人 人は誰でも、何歳でも変わることができる

そしてもう一人、本作で一番成長した人間が外国人女性のマチルダです。

彼女は料理が出来ないことを理由に夫から離婚を突きつけられて傷心中の所をトン子に救われます。

その変化は元夫を驚かせるのですが、そこに込められた意味は何だったのでしょうか?

料理人としての自立

まず一番に驚くべきはマチルダの料理人としての自立にあり、元夫に対して挑戦状を叩き付けました。

私の覚悟と向き合えるのなら、もう一度迎えに来てください

引用:食べる女/配給会社:東映

もうこの一言に成長したマチルダの全てが込められており、彼女は元夫に媚びなくなったのです。

しかしそんな彼女とは対照的に夫はまるで成長しておらず、相変わらずの見下した態度。

如何にも女は料理が出来て当然で男に尽くしてナンボという悪い意味で亭主関白のまま。

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