かつて3千万もの借金を抱え自己破産寸前だったのに、それをはね除けて作家として名を成しています。
企画・構成力もあり他者を楽しませる一方、その楽しさの為に周囲の気持ちに鈍感だったのです。
それに陽一郎も彩子も正蔵もあきれ果てており、さぞかし神経をすり減らしていたに違いありません。
ある意味ではとても人間くさい人であり、それをユーモラスかつ綺麗に表現しています。
まるで悲壮感を漂わせず最期まで楽しさの一点突破で走り続けた作家であることを意味しているのでしょう。
週刊誌に載った理由
物語の中盤、修治は自身が勤める会社の近くの喫茶店で清瀬モモと名乗る若い女性と抱き合っていました。
その場面を週刊誌に撮られ掲載されてしまうのですが、果たして何の理由でそうなったのでしょうか?
妻と別れる作戦
まず大前提として、この週刊誌への掲載は修治自身が意図して仕掛けた作戦でした。
彼が若い女性と不倫する場面をわざと撮らせて彩子と別れたかったと判明しています。
その証拠にモモと別れた直後妻に離婚届を突きつけて、わざと家庭の悪口をいうのです。
この作戦自体は彩子が膵臓癌を知ったことで回避されましたが、非常に危険でしょう。
運良く慰謝料を請求されずに済んだものの、やっていることはかなりの邪道です。
こういう作戦を平気で遂行できてしまう修治の合理性故のドライさが凄く目立ちます。
歯車が狂い始めた借金
この浮気を匂わせての離婚届のシーンで、若き頃借金を抱えていた修治の話が出てきます。
この時妻の彩子が貧乏暮らしを楽しむべきだと口にして歯車が狂いだしたのではないでしょうか。
彩子のアドバイスは辛いときこそ力を合わせて乗り切るべきだという前向きな助言でした。
しかし、修治は楽しさの為にわざと辛い目に遭わせるべきだという方向へ解釈したのでしょう。
もっとも、それ位狂っていなければ土台一流の放送作家にはなれなかったのかもしれません。
孤独
そして三つ目に、修治は本質的に天才故の孤独を抱えていたのではないでしょうか。
多くの人に愛され、自身も多くの人を愛しながら尚彼は放送作家として裏で画策を続けるのです。
かおりや正蔵からもそのことを指摘されながら辞めない所にその孤独さが表現されています。
だからこそ週刊誌に載るようなことだって楽しみながら平然と出来てしまうのでしょう。
明るく楽しく見せていても、修治は家庭でも職場でもずっと死ぬまで孤独から解放されませんでした。
それがこの爽やかさの裏にあるブラックジョークの理由の一つであったのかもしれません。
正蔵がお見合いを了承した理由
正蔵はずっとお見合いをお断りしていたのに、何故か終盤では了承します。
修治と彩子の事情を深く知りながらも尚断り続けていた彼がこの決断を下した理由は何だったのでしょうか?
意趣返し
実は正蔵と彩子のお見合い・再婚は全て最初から二人がグルになって仕組んだ作戦だったのです。