モロッコの旅から11年経った一男は3000万円の借金に追われ、それが原因で家族と別居した男となっていました。
そして、偶然から手に入れた宝くじが偶然当選し3億円を手にした一男は、まさに「芝浜」で大金を拾った魚屋の勝五郎と同じです。
その一男が借金返済後の大金をどう使ったらいいかの相談をしたのが、「バイカム」で成功を収めていた親友の九十九でした。
一万円札と1円玉の重さ
九十九は1万円というお金の概念について、1万円札1枚と1円玉は一枚の重さが両方とも1gで同じなのが皮肉だと言います。
そして、お金のことを理解していないと、1万円でも1円と変わらない価値になると知らしめることを実行しました。
その象徴的なシーンが九十九がプロデュースしたパーティーでの、「一万円札のばらまき」シーンでしょう。
モロッコの旅で1円でも安く旅をしようと節約してきた一男を試すかのように、1万円をばらまくように促したのです。
「お金の正体」とは
九十九は「バイカム」を一緒に立ち上げた仲間が、目先の売却金額に目が眩み手放したことで疑心暗鬼になっていました。
お金の正体に近づけば近くほど、大切なものを失ってきた。
お金は変わらない、使う人が重くも軽くもしてしまう。
お金を変えてしまうのは人だ。
引用:億男/配給:東宝映画
九十九のわかった「お金の正体」の99%とは、バイカムを売却し別の道に進んだかつての起業仲間のように、志や夢を変えてしまうことでした。
一男も元バイカムの発起人達と会ったことで、積み上げてきた自分の価値や夢を捨てさせるほどに、お金は人を変えるモノと思い知ったのです。
まどかの自転車を買った真意とは
元バイカムの発起人を訪ね、最後に九十九が現れたことで一男は「お金の正体」に気づくことができました。
それではその一男がまどかに自転車を買って贈った真意を考察してみましょう。
生きる為の欲
万佐子にとってまどかの成長こそが幸福でまどかの願いを守ることが、困難を乗り越える糧になれると考えていたのです。
夫婦にとって“生きるための欲”とは「まどか」の存在です。しかし、一男は借金返済の為にまどかからバレエのレッスンを奪おうとします。
一男も借金ができるまでは万佐子と同じ価値観で生活していましたが、借金は娘のレッスン代すらも惜しみ苛立つほどに変えたのでした。