何よりもこの別れが示していたことは余りにも生き様や性格が対照的過ぎた姉妹でしょう。
二人を対比させると園子は「俗」で妹・蓉子は「聖」のイメージです。
園子は良家の長女と思えない程性にだらしなく、一度暴走すると歯止めが利きません。
そんな園子に呆れつつも蓉子は逆に良家のお嬢様という清楚なイメージをしっかり貫きました。
二人の生き様は最後の結末に現われ、妹が一番の幸せ者として花を咲かせたのです。
雨宮と蓉子は性にふしだらな男と女の本作における最後の「理性」だったのではないでしょうか。
園子の首を絞めた理由
物語後半、園子は夫・雨宮に性行為は愛がなくとも成立することを口にして首を絞められました。
夫の怒りは納得の行くものですが、彼がここまで激怒する理由は何だったのでしょうか?
想像力の欠如
ここで一番大事なのは雨宮が首を絞めた理由が決して只の個人的感情ではないということです。
彼は園子が不倫・売春で越智や美大生も含む周囲を傷つけたことへの想像力の欠如に腹を立てました。
雨宮は普段凄く温厚で優しいですが、一方でそうした不義理や筋の通らないことは許せない人です。
もし僅かでも想像力があれば、園子は自分で気がついて辞めていたでしょう。
そのくらい彼女がしたことは人間として下劣な行為だということをこの行動で示しました。
情けない自分への怒り
二つ目に挙げられるのが、結婚していながら妻の本性に気づけなかった自分の情けなさ故でしょう。
人は他者に怒ったり嫌ったりするとき相手の中に自分の嫌な点を見出すといいます。
それは即ち雨宮もまた自分の仕事のことしか考えず妻の気持ちを蔑ろにした側面があったのです。
そのことに気づいていたからこそ、首を絞め憎みながらも殺すまでには至りません。
しかしここでの失敗を無駄にはせず妹・蓉子との関係でしっかり改善したようです。
そういう意味ではここで一度感情をぶつけておいてよかったかもしれません。
まとめ
本作は男と女でまるで感じ方や評価の違う作品ではないでしょうか。
女性側に優位に進む一方で男性陣はとことんまで容赦なく情けなく描かれています。
そして女性はどこまで行こうと子宮で物を感じて行動する生き物だとも示しているのです。
昭和時代にここまで性と恋愛の切り分けと女性の愛の本質まで辿り着いた作品は確かに類を見ません。
しかし、だからこそ女性は性の魅力を決して安売りしてはならないし、男性もまた然りです。
そのようなことを特殊なアプローチで考えさせた、良くも悪くも尖った個性派の作品でしょう。