ワンピースの存在も、好みがすれ違っていたにも関わらずエヴァの機転やエディ―の思いやりによって丸く収まっているのです。
この絶妙な関係性、絶妙なすれ違いこそこの映画の醍醐味といえるでしょう。
すれ違う喜劇
本作は「すれ違い」が観るものに可笑しさを提供してくれます。
観方によってはウィリーがプレゼントしたワンピースも、すれ違いのアイテムになるでしょう。
すれ違いは悲劇ではない
本作ではすれ違いを繰り返し描写していますが、なぜか悲劇性を感じることがあまりありません。
すれ違った後には、どこか滑稽さが残っているのです。
一般的な映画ではすれ違いが大きな悲劇を生むものですが、本作ではすれ違ったからといって何も変わりません。
それこそがジム・ジャームッシュ監督の魅力でありこの映画の面白さなのでしょう。
アメリカへの思いのすれ違い
ジョン・ルーリー演じるウィリーは、自分の故郷を否定するほどアメリカへの憧れにも似た固執観念を持っています。
彼の中でアメリカの文化は最高のものなのです。
一方その様子を冷静に批判するのがエスター・バリント演じるエヴァでしょう。
この2人のすれ違いによって、観客はアメリカという国を客観的に観ることが出来るのです。
そこに面白さや愛おしさを感じる不思議な魅力があります。
第37回カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)
第19回全米映画批評家協会賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ストレンジャー・ザン・パラダイス
本作はモノクロのデッドパン映画ですが、世界中から高い評価を受けています。
公開と同時に世界中に衝撃を与えた作品でもあるのです。
ハッピーエンドなのか
エヴァとウィリーがすれ違ったまま終了してしまった本作ですが、果たしてこの映画はハッピーエンドだといえるのでしょうか。
それぞれがすれ違ったそのまま映画は終わってしまったので、この後彼らがどのように再会したかは謎のままです。
しかし物理的距離はあっても、エヴァとウィリーお互いへの恋心がはっきりしているのではないでしょうか。
この映画はハッピーエンドでありバットエンドでもあるのでしょう。
それが本作の良さでもあります。
独特の空気感がたまらない名作
この映画は、役者が表情を変えないからこそ観る者の想像力が試されます。
また想像力を膨らさせて観るという面白さもプラスされるのでしょう。
ジム・ジャームッシュ監督の代表作ともいえる『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は、一時も目を離したくない作品です。
すれ違うことの面白さを、じっくりと味わいながら観返してみてはいかがでしょう。