神様はその人にしか乗り越えられる試練しか与えないといいますが、正にジョージの人生がそうです。
自分がやりたいことを後回しにしてでも他者に投資する生き方は彼にしか出来ないことでしょう。
そしてそんな彼の生き方がクラレンスを動かし、引いてはリターンとして戻ってきたといえます。
自らを犠牲にする理由
ジョージの人生は自己犠牲、即ち自分のやりたいことではなく他者の為に生きる人生でした。
彼は他者の為に自らがしたいことを押さえる場面が何度も何度も訪れます。
見ていて気の毒に思えますが、何故ここまでしなければならないのかを考察していきましょう。
弟ビリーを助けたこと
まず最初のきっかけになったのは12歳の時、弟のビリーを助けたことです。
ここで彼は左耳の聴力と引き換えにビリーの命を守るために自分を犠牲にしています。
ジョージはこの時に「他者の為に尽くすこと」が生きる目的となったのではないでしょうか。
自分が手を差し伸べれば誰かが助かり幸せになる…彼が一番望むことは他者の幸福です。
ここでジョージという男の根幹は出来上がり、以後の彼の人格を形成していきます。
父の死と弟の帰郷
第二のターニングポイントは父の死と弟の帰郷にあります。
ここで注目したいのはジョージが「旅行」しようと思ったときに自己犠牲を決断していることです。
即ち本作では旅行=自分勝手な我が儘の象徴としてまるで悪いことかのように描かれています。
またどちらもジョージにとって大切な人が絡んでいること為余計に放っておけないのでしょう。
とはいえ、それらの選択がメアリーとの出会いと結婚、素敵な家族を持つ幸福に繋がっているのです。
正に損して得取れの生き方を体現しているのではないでしょうか。
他者の為に生きるデザインになっている
三つ目にジョージ自身の意志ではなく他者の為に生きるデザインになっているのではないでしょうか。
この考えを表わすものとしてヒューマンデザインという様々な統計学・占いを組み合わせたものがあります。
それによると、人々は生まれた時間や場所によって生き方が予め決められているのだそうです。
ジョージはその意味で生まれつき他者の為が自分の為という生き方を決められているのかもしれません。
だからこそ上記した個人的感情で家族に八つ当たりし自殺しようとしたのは彼らしくない生き方になります。
いわゆる「他者の為に生きる星の下に生まれついた」のがジョージという男です。
トムソーヤが天使に与えた影響
ジョージを助けた天使クラレンスは「トムソーヤの冒険」を読み、ラストでジョージにメッセージを添えました。
果たしてこの書物は彼にどのような影響を与えたのでしょうか?
マイナスをプラスに転じる
今や児童文学の傑作となっている「トムソーヤの冒険」ですが、この作品には様々な教訓が詰まっています。
その中でも影響として大きかったのは腕白なトム少年のマイナスをプラスに転じる発想力ではないでしょうか。
悪戯をした罰ゲームとしてやる筈だったペンキ塗りをからかいに来た友だち相手にポジティブに行いました。
すると何と友だちもそれを楽しくやりはじめ、しばらく経つと宝物だけ手に入れて寝そべってしまいます。
そう、彼は嫌なことをチャンスに変えて、よりよい方向に変えていこうとする発想力があるのです。