序盤に、イッパイアッテナから激しく怒られた場面と対応するシーンです。
脅し文句ってのは 軽はずみに口に出していいもんじゃねえ
命を懸けて 本気で言うもんだ!引用:ルドルフとイッパイアッテナ/配給会社:東宝
初めは、何も知らないただ無邪気な子供だったルドルフの成長。
さらに敵対関係の相手を許すことは、「敵と味方」のような単純な世界からの変化とみることもできます。
こうした行動ができた理由は、「教養」を得たから。
狭い世界で生きてきた存在が、広い視野を得たことがわかるのです。
大人への変化
同時にここには、二匹の関係性の変化も見出すことが出来ます。
序盤は、ルドルフとイッパイアッテナ=子供と大人という構図。
イッパイアッテナに代わって行動することによって、ルドルフも大人へと変化したのです。
大人=教養があるものということは、言い換えれば自分の意志で判断し行動できる存在ということ。
デビルを助けたことは、ルドルフの大きな成長と変化を象徴的に表しているといえるでしょう。
そしてこれが、岐阜に戻った際の言動にも大きな影響を与えることになります。
新しい「ルドルフ」と「イッパイアッテナ」
岐阜の家に戻ったルドルフが出会ったのは、新しい「ルドルフ」と名のつけられた子猫でした。
ここでのルドルフの振る舞いについて考察します。
ぼくの名前
ぼくの名前は……イッパイアッテナ
引用:ルドルフとイッパイアッテナ/配給会社:東宝
子猫に尋ねられたルドルフはこう名乗って、家を後にします。
「イッパイアッテナ」は、ルドルフにとって大人の象徴。相手は子猫、自分は大人だと自覚した瞬間でもあったのでしょう。
この名前を名乗ることは、自身が完全な大人になったと宣言したことになるのです。
子供時代への別れ
さらにこれは、ルドルフが自ら子供時代への別れを告げた瞬間でもあります。
戻ってきた家には既に別の猫がいて、二匹は飼えないという事実。これはルドルフにはどうしようもできないことです。
これまでにも、ルドルフもイッパイアッテナも、どうしようもできない問題に遭遇してきました。
そんな時どうしたのか。教養をもって状況に対応したのです。
相手は子猫=「教養のない存在」です。事実を告げてもただ混乱するだけでしょう。
それがわかる存在になっていたからこそ、ルドルフは身を退いたのです。
大人になる為に必要だったこと
ただ忘れてはならないのは、この行動が諦めや絶望から出たものではないということ。「絶望は愚か者の答え」だからです。
本当は ぼくのリエちゃんなんだ!
引用:ルドルフとイッパイアッテナ/配給会社:東宝
ルドルフの、大好きなリエちゃんへの気持ちは消えていません。ただしそれでも、去ることしかできない辛さが窺えます。
序盤の展開をなぞり、再度トラックの荷台に乗って東京へ向かうルドルフ。今度は自分から乗ったことがポイントです。