結果的に申請者リストから外れるようなシステムになっていることを、ダニエルも薄々気がついているのでした。

ダニエルはなぜケイティを助ける?

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失業保険や介護保険、生活保護を受けるにはソーシャルワーカーのヒアリングを受けて、状況を正しく把握してもらい認定をしてもらいます。

イギリスの社会制度を知らない人がこの作品を観たら多くの人が、その制度の融通のきかなさに疑問を持ったことでしょう。

ダニエルはソーシャルワーカーの理不尽さや社会制度の複雑さに疲弊していましたから、弱者に対する職員の冷徹な態度に激怒するのです。

愛情深さと心の広さ

ケイティは新しい生活拠点のニューカッスルをロンドンよりも親切だと母親に話します。

それは知らない街へきたばかりのケイティ親子が受けた役所の理不尽な態度に、ダニエルが加勢してくれたことが親切に思えたからです。

ダニエルはアパートの隣りに住む若者にも厳しくも愛情深く接していたので、2人の子供を連れ困っているケイティに強く同情をしたのでしょう。

ダニエルの心を埋める存在

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大工のダニエルは曲がったことが大嫌いな職人気質で、困った人をみたら放っておけないそんな男気にあふれた人情味があります。

また、妻の介護を心のよりどころにしていたので妻を亡くた心のすき間に、同じような境遇のケイティに気持ちが共鳴したのでしょう。

ケイティの荷物を持ってあげ、フードバンクに付き添う姿は、自分の事も大変なのにギリギリまで人に頼らない典型的な英国紳士といえます。

ダニエルが落書きをした真意

人間の尊厳

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ダニエルには大工として40年間働きその間の税金もしっかり納めさらに、心を病んだ妻を介護しながら両立させてきた自負があります。

そして、援助や手当を得るために指示に従い“足を使って”求職活動をしても、ダニエルの理解を超えた行政のシステムはその努力を拒むのです。

また、役人の対応は敬いや親切心を著しく欠いたもので、彼のプライドをズタズタに引き裂くのでした。

ダニエルがスプレー缶を持参して役所に行き面談したアンに本音をもらしたのは、その日を最後と決めていたのでしょう。

当たり前の権利の主張

国民として納税の義務を果たしていれば、いざという時に当たり前の権利を文句なく得られるはずでしょう。

役人たちの仕事は楽になっても、国民の苦しみは楽にならないそんな抗議行動としてダニエルは落書きを書いたのです。

ダニエルと同じように当たり前の権利を得られない、不平不満を抱えた市民は落書きを見て共感をしていました。

ゆりかごから墓場までの崩壊

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1945年以降のイギリス国民は「ゆりかごから墓場まで」と銘打った社会福祉制度の確立で、誰もが最低限の生活保障がされるようになりました。