ハマモトさんの父をはじめとした研究者たちを飲み込んでいくのもブラックホールのイメージと合致しています。
人々にとってはすべてを飲み込む恐怖の対象としてのブラックホールが海だったのではないでしょうか。
意思を持つもの
海は近づいた者を飲み込んだり、形状を変えて飲み込もうとするなどどこか意思を持った存在のように見受けられました。
こうした意思を持った液体のようなものを「海」と呼ぶ点で『ソラリス』という作品の「海」の影響を本作は受けているといえます。
人類の英知を超えた「海」という存在を解明しようと研究をするという点も本作との共通点といえるでしょう。
海での記憶を失ってしまった理由
お姉さんは海辺の町で育った記憶を持ち、歯科医院で働く女性でした。
ではなぜ海での記憶を失ってしまったのでしょうか?
ここでは2つの仮説を立てて考察してみます。
いつ来るかわからない海の発生に対応するため
物語冒頭から、アオヤマ君とお姉さんはチェスを打ったり歯科医院で親しく話をするなど関係性を築いていました。
したがってペンギンが発生する以前からお姉さんは街に存在していたと考えられます。
そこから考えられるのがいつ来るかわからない海の発生に備えて人間社会に溶け込むため、記憶を消していた可能性です。
アオヤマ君たちの協力により海を破壊することができたので、協力者を作るため人間としての記憶が作られたとも考えられるでしょう。
人類が救うに値するか確認するため
お姉さんは世界を修復するペンギンも、そのペンギンを捕食し人間も襲うジャバウォックも作り出すことができます。
世界を修復したいと思うかどうかはお姉さんの周りの人間によるのではないでしょうか?
もし、悪い人間ばかりのいる世界だったら世界を破滅させたいと思ってしまう可能性もあります。
よって人間社会に溶け込むことでその人間が住む世界が救うに値するかを判断するためとも考えられないでしょうか。
ペンギン・エネルギーとは
小学生であるアオヤマ君とウチダ君はある日、ペンギンたちが何も食べずに活動ができるということに気が付きます。
では、ペンギン・エネルギーと命名した、このペンギンたちの活動源とは一体何だったのでしょうか?
まず、注目すべきは海から離れるとペンギン・エネルギーの供給が絶たれてしまう点です。
ペンギンはその形を維持できずに元のコーラの缶に戻ってしまい、お姉さんも体調が悪くなりました。