この鏡の間は、今はなきブロンクス動物園に実際に合った場所です。
実際には「他の動物を絶滅させたことがある存在」として、展示されていました。
恩地にとっての鏡
ライオンなどの危険な動物がたくさんいる動物園の中、皮肉にも一番危険なのは「人間」であるとされているのです。
美紀が行天のスパイだったことを知り、数々の不正も事実であることが分かった恩地…。
人間の欲が恐ろしく危険であると身をもって理解した瞬間だったのではないでしょうか。
本作には私利私欲を満たそうとする人物達が多数登場しており、その為の陰謀や他人の心を顧みない冷酷さが描かれています。
動物園にあった鏡は、人間の持つ醜さや危険な思考を映し出すものだったのではないでしょうか。
ナイロビ行きを決断した真意
劇中で行天によって再び海外赴任させられてしまいますが、彼はどんな思いでナイロビ行きを決意したのでしょう。
居場所を失ったから
国見の会長辞任によって、事実上恩地には居場所がない状態でした。
国内に居場所がない以上、ナイロビ行きに従うしかなかった、というのが大きな要因でしょう。
会社に残る道はそれしかなかったのです。
まだまだ戦う意思があったから
自分のやりたい仕事をさせてもらえない、通常ならば心が折れても仕方がありません。
しかし恩地は辞職するという選択肢を取りませんでした。
日本を離れる前に御巣鷹山に登ったのは、国民航空の内部改善を諦めていなかったからではないでしょうか。
恩地はどこまでも真っすぐで、強い信念をもった男性です。
自分の存在理由を知っていた
恩地は組合の委員長として戦った自分の存在価値を理解していたのではないでしょうか。
ナイロビに行かないという選択は、恩地が仕事を辞めることを意味しています。
職場環境の改善の為に、恩地は会社に存在し続けなければならない存在です。
自分の存在価値を理解していたからからこそ、ナイロビ行きも穏やかに受け入れることが出来たのでしょう。
描かれた家族愛
本作は、巨大な組織に隠された闇が中心に描かれていますが、そんな組織に翻弄された家族の物語でもあります。
大切なものに気づいた瞬間
海外赴任先には娘から下記の手紙が届いています。
自分勝手なお父さん
引用:沈まぬ太陽/配給会社:東宝
自身の信念を貫いていた恩地ですが、その信念のために家族を犠牲にしていたと初めて気がついたのです。
信念を貫くことは、時としてわがままに見えてしまうこともあるのでしょう。
辛い思いをしていたのは、恩地だけではなかったことが伺えます。
家族の思い
恩地が日本に戻る頃、家族もともに成長しています。
周囲から父親を批判されたこともあったでしょう、しかし母親が恩地を信じていたことが家族の信頼を築きあげていったのではないでしょうか。