フロック:嫌だ!父さんは、もう僕の好きな父さんじゃない!
引用:映画ドラえもん のび太の宝島/配給会社:東宝
最初の2人の会話では、家出息子に対する父親のようなやり取りが展開します。
シルバーがフロックを保護対象として見ているいる反面、フロックはまるで反抗期のような対応で父親と距離をとっていました。
回想シーンからは父親の心を自分に向けたい子供らしい気持ちをもっていましたが、この時のフロックは違います。
陰から父を見ているセーラに対し、フロックは独学でメカニックを学びいつの間にか独り立ちしていたのです。
二言三言の短い会話の中からは反抗期の少年の姿や父親からの自立心が伝わってきます。
会話の無い会話
シルバーは回想シーンでこそ妻や子供と会話をしていますが、船長となった後はほとんど会話をしていません。
船上での再会シーンでも、地球エネルギーを奪おうとするシーンでも一方的に語るだけでした。
しかし、シルバーがそれまで積み上げてきたものは全て「ノアの箱舟計画」の中にあります。
地球エネルギーを奪い合うメカニック対決は、言葉こそないものの親子の感情のぶつかり合いともいえる攻防だったのかもしれません。
フィオナの残した言葉の真意
この子たちは私たちの宝物
子ども達の未来を頼むわね
引用:映画ドラえもん のび太の宝島/配給会社:東宝
フィオナが残した言葉は、研究に打ち込むシルバーの心の中で少しずつ歪曲していきました。
子ども達が過ごす地球の未来を託した妻に対し、シルバーは地球を捨てる結果を選択。子ども達だけを守ろうとしたのです。
しかし、彼女は子どもと夫に対する感情をきちんとシルバーに伝えていました。
宝物・・・人の幸せを願い、人の苦しみを悲しむことのできる人
引用:映画ドラえもん のび太の宝島/配給会社:東宝
フロックとセーラと正面から向き合ったシルバーは、妻の言葉を思い出してこうつぶやきます。
この時やっと、シルバーは自分の「宝物」が「子ども達の心」だったと気付いたのです。
相手を思いやる心を大切にして欲しいという妻の気持ちに気づけたのは、子ども達の姿に妻の姿が重なって見えたからなのでしょう。
家族の在り方
本作のテーマは父と子の関係性とあり方といえます。
冒険に憧れたのび太は冒頭から父親と喧嘩をして話も聞かずに飛び出し。フロックとシルバーも親子として上手くいっていません。
子どもには夢のある宝探しの冒険譚を、大人には子供の視点から見た父親の姿を、物語を通して伝えているのです。
時には反面教師になる父親
キャプテンシルバーの本当の名は「ジョン」です。
彼は、フィオナを失ったショックと歪んだ研究から、名を変え父親としての立場を封じていたのかもしれません。
父親という立場を捨てたシルバーは、家庭を持つ人間ではなく独裁者や支配者として箱舟に君臨していました。
フロックは元の父親に憧れと尊敬を抱きながらも、シルバーを嫌煙。
反面教師としての父親を長く見ていたことでフロック自身の技術力は磨かれ、彼の野望を阻止する力を身に着けていったのです。
対話の持つ重要性
悲しいから
パパと争うなんて、僕だったら悲しいから!
引用:映画ドラえもん のび太の宝島/配給会社:東宝
のび太の言葉でシルバーは子供の気持ちに気づかされます。
それまで研究の目的しか考えていなかったシルバーは、のび太のセリフでやっと子供たちの目を見たのです。
いくら自分だけが努力をしても、それで子供が喜ぶわけではありません。
フロック:父さん!もうやめようよ
セーラ:一緒にあのおうちに帰ろう!
引用:映画ドラえもん のび太の宝島/配給会社:東宝
研究に没頭してから始めて父親として子供たちと向き合ったシルバーは、彼らの言葉で本当に大切なものに気づきます。