このシーンはそんなつぐみのひねくれぶりを余すところなく表現しています。
体の弱さ≒心の弱さ
上2つの理由を突き詰めていくと、つぐみは即ち心も体も弱い人だったことが分かります。
自身の体の弱さを覆い隠し、生き延びる処世術があのひねくれた言動・行動の数々なのでしょう。
逆にいいますと、そんな弱い自分に自信がないことの現れだったのです。
もしつぐみが強い人であったらあんな振る舞いをせずとも自然体でいればいいでしょう。
でもそんな自然体の振る舞いをするということは自分の弱さを認めることになってしまうのです。
それ位切羽詰まった余裕のない生き方をしていたのがつぐみという女性だったのではないでしょうか。
恭一に惹かれた理由
そんな天邪鬼なつぐみですが、彼女は自然の成り行きか運命の出会いか恭一に惹かれます。
恭一は確かに劇中でも強く優しい好人物ですが、つぐみは何故惚れ込んだのでしょうか?
2人の心情や流れを中心に読み解きます。
天使と悪魔
まず直接的に示されているのはつぐみが恭一を引き寄せて口づけを交わすシーンでのこの台詞です。
天使が通ると、ドキドキして体に悪いんだ
引用:つぐみ/配給会社:松竹
ここで恭一=天使、つぐみ=悪魔というキリスト教モチーフで準えられていることが分かります。
この表現は2人が全くの正反対である故に惹かれ合っていることを示しているのではないでしょうか。
恭一はつぐみとは正反対で体も丈夫で心優しくて、つぐみにとっては眩しく映った筈です。
逆にいうと、つぐみの実は優しくて真っ直ぐな無意識の性格を体現したのが恭一でしょう。
合わせ鏡のようにして2人は自然と惹かれ合ったことがこのシーンから分かります。
病弱だった過去
2つ目に後半のシーンで実は恭一とつぐみが病弱だった過去を話し合うシーンがあります。
ここで2人が本質的に似た者同士であることを示し、距離を一気に縮めているのです。
しかもそれだけではなく、恭一はつぐみに面と向かって激励の言葉を贈ります。
お前の心は丈夫だし、ずっとここにいても世界中を旅してる奴より沢山のものを見ることができるよ
引用:つぐみ/配給会社:松竹
そう、恭一はずっと自身の体の弱さと心の弱さを覆い隠すつぐみの本質に気付いていたのです。
これはつぐみにとって初めて自分の存在意義、生きる意味を見出せた瞬間ではないでしょうか。
だからこそこの後に出てくる復讐のシーンがとても痛ましくなります。
報復
つぐみの愛は恭一をボコボコにし愛犬ピンチを死なせた不良達への報復で憎悪として現われます。
ここで彼女は一気に暗黒面へと落ち込み、文字通り命がけで不良たちを落とし穴へ嵌めたのです。
決して丈夫ではない体で死を覚悟の上で命を削り、ただ恭一を傷つけられた怒りだけで成し遂げました。
もうこのシーンにそんな恭一への愛、想いが全て詰まっているのではないでしょうか。
それ程に痛ましく切なく、しかしそれ程にエネルギッシュなつぐみの生命力と愛が感じられます。
ラストの手紙に書かれたつぐみの想い
そんな本作のラストはつぐみが書いた手紙という形で終わりを迎えます。
果たして彼女の手紙に綴られた想いとはどのようなものだったのでしょうか?