尚且つ大規模な山火事となるとホットショットの下で働かなければならないのです。
給与面の待遇も決して良くはなく、労働内容や時間が成果として現われません。
仕事は成果がきちんと数字として出てこそやり甲斐も感じられ楽しく働けるのです。
生産性の低さ・待遇の悪さを何とか改善しようとエリックは思ったのではないでしょうか。
来たるべき山火事への備え
2つ目にエリックは長年の経験と勘からプレスコットでも大きな火災が起きる予測が出来ていました。
どんな災害も起こってからでは遅く、徹底した事前準備・ガティブシミュレーションが必須です。
寧ろどれだけ準備をしてもし足りない位大自然の脅威は対応が困難なこともあります。
それにも関わらず対岸の火事にしか思っていない市長や市議会は全く取り合ってくれないのです。
職場環境以外の街全体のシステムの不足・不備もまたエリックにとっては腹立たしいものでしょう。
その反骨精神でエリック達は見事に地元上がりのホットショット設立という異例の革命を起こしました。
上昇志向が高かった
3つ目に発起人となったエリック自身が上昇志向や自負心の塊みたいな人だからです。
もはや消防士という仕事以外に自分の生きる道はないといわんばかりの姿勢で仕事に取り組んでいます。
具体的にそのことを妻のアマンダから終盤に欠点として怒と共に指摘されていました。
ここまで行くとプロフェッショナルというよりもワーカーホリックというべきでしょう。
妻が子供を作りたいと望みながらも作らなかったのも彼のワーカーホリックから来ています。
ただ、それ位でなければ過酷な消防の現場は務まらないことを示しているのではないでしょうか。
フィクションからリアルへ
作品を掘り下げていくと、本作の神髄は「フィクションからリアルへ」という構造になっていることです。
物語の前半はマクドナウという薬物中毒者が自分の人生を生き直す成長物語として描かれています。
受け手をマクドナウに感情移入させ、後半からラストに向けて一気に描写はリアルへ切り替わるのです。
そう、ホットショット設立まで成し遂げながらもその思いは大自然の脅威に打ち砕かれてしまいます。
ここで優しい嘘をつかず、受け手にしっかりと現実を見せつけて境界線を超えて見せました。
描こうと思えば隊員達が無事に消火を成し遂げる神話じみたヒーロー物語へ転化出来たでしょう。
それをせずしっかりリアルを貫き通した作り手の意地が本作を傑作たらしめた最大の要因です。
人知れず戦い続ける者達
いかがでしたでしょうか?
本作は決して優秀なヒーロードラマではなく、また単なる災害パニック映画でもありません。
ただ人知れず戦い続ける者達の現実をありのままに描いた作品だったのです。
マクドナウ達ホットショットの活躍やその名前が歴史に残ることはありません。
しかし、そういう名前を残さない人たちこそが歴史を作っているのも事実です。
表に目立つことはなくても、その人たちのお陰で人々は安心して暮らすことが出来ます。
本作で描かれたマクドナウ達の雄姿は見る人たちの心に大きく残ることでしょう。