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日本では2013年公開の映画、『ムーンライズ・キングダム』。
メガホンを取るのは『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『犬ヶ島』などでも有名なウェス・アンダーソン監督。
キャストには、ブルース・ウィリスやエドワード・ノートンといった実力派が勢揃い。ちょっと情けない役の彼らも見どころです。
サムとスージーの逃避行を巡り、島の中で繰り広げられるドラマ。
少年少女の恋が人々にもたらしたものはなんだったのか、考察していきます。
二回の逃避行 その違いと変化
物語は二回の逃避行で、大きく二つに分けることができます。それぞれの意味を考察してみます。
“子供”の逃避行
まず一回目。これは、子供の二人がなんとか大人を演じようとする点がポイントと思われます。
逃避行ながら向かう先は歩いて行ける入り江で、スージーは猫まで連れ、「十日後に戻る」と置手紙。
彼らにとっての駆け落ちに対する認識がその程度ということが窺えます。
道中や到着後も、どこか借り物めいてぎこちないやり取り。大人ぶった振舞いが、逆に彼らの未成熟さを際立たせています。
それでも彼らは真剣です。弱音も吐かず歩みを進めたのは彼らなりの必死さの表れ。
この必死さが後半でどのように結実するのか、期待を高める作りとなっているともいえるでしょう。
大切な通過儀礼
そんな彼らが大人になろうと苦心していることがわかる言動にも注目です。
たとえばスージーが釣り針ピアスを空けてもらうこと。痛みを伴う行為は儀式であると同時に、性行為の隠喩とも取れます。
他にも、親への思いを吐き出すスージー。おねしょを打ち明けるサム。
彼らは他の誰とも共有できなかった経験をすることで、関係を深めていくのです。
冷めたサムと夢見るスージーとで少しの齟齬はありますが、喧嘩をしてもすぐに仲直りしようとするのは、大人になろうとしているから。
一回目の逃避行は、ぎこちないながらも、彼らに必要な通過儀礼なのです。
入り江を愛の拠点にした意味を考察
では、なぜサムはあの入り江を目的地としていたのでしょうか。
旅の目的地
「君は大人になったら 何になりたい?」
「一箇所にいないで 冒険の旅に出たいわ」引用:ムーンライズ・キングダム/配給会社:フォーカス・フィーチャーズ、ファントム・フィルム
入り江での会話。彼らが、大人になる=子供をやめるためには旅が必要と考えていることがわかります。
旅とは移動=固定されないこと。周囲の価値観や環境に縛られることから逃げたがっていることは明白です。
そんな二人が歩いたのは原住民が辿ったという道。いわば島に伝わる伝説です。それも身近にあって頑張れば歩いて行ける距離にある。
その先にある入り江は、彼らが夢見るのに丁度いい別世界の象徴だったのでしょう。