ここでは、イラが女の子を出産した意味について考察していきます。
神からの試練
イラの子供が女の子であったことは神からの試練であったと考察できるでしょう。
その理由は、イラが妊娠した際、ノアは啓示に従って「女であれば殺す」と話している点にあります。
生まれたのは双子の女の子でしたが、ノアは子供達を殺すことができませんでした。
啓示に初めて背いたノアですが、その後は空に虹がかかり、世界に平和が訪れています。
ここから考えると、神はイラの子供を殺すか否かをノアに託すことで、ノアが持つ慈悲・愛情が本物かを試したのです。
繁栄の啓示
そもそも、ノアが双子の女の子を殺そうとしたのは、やがて母となるからという理由が根底にあります。
欲にまみれ、罪を背負った人間という存在がこれ以上増えないようにするためです。
しかし双子の女の子を生かしたことに対して、神が裁きを下すことはありませんでした。
ここから考えると、ノアの一族から再び始まる人類の繁栄を神が望んでいるといえるでしょう。
継承の証とは何だったのか?
映画の冒頭から、度々登場しているアイテムとして継承の証があります。
この継承の証は、ノア一族・カイン一族の生き方に関わる重要なアイテムなのです。
ここでは物語に度々登場する、継承の証に隠された意味について考察していきます。
業の継承
継承の証は、脱皮した蛇の皮のような見た目をしています。
「蛇」といえば、創世記においてアダムとイヴに善悪の知識の実を食べるよう唆した生き物です。
つまり蛇の皮は、神の言い付けを守らず、善悪の知識の実を食べて追放されてしまった罪を象徴しているといえます。
継承の証が受け継がれることで、人類が背負うべき業も継承しているのでしょう。
リーダーとしての役割
継承の証は元々ノアの父親が持っていましたが、物語の冒頭においてカインの一族に奪われています。
継承の証を奪った直後から、カインの一族はノア達が住んでいた場所を占領し、略奪の限りを尽くしていました。
しかし、ノアの父親はなすすべもなく殺され、他の人物もカインの一族の指示に従っています。
ここから考えると、継承の証は人類を率いるリーダーとしての役割や権利の象徴といえるでしょう。
まとめ
『旧約聖書』創世記の内容に基づいて作られた「ノア 約束の舟」は、人類の始まりを描いた壮大な叙事詩的作品といえます。
神と人間の関わり合いのなかで描かれる滅亡と繁栄の物語は、ファンタジーとしてはもちろん、人類の起源を知れるきっかけにもなることでしょう。
登場する人物や道具は、原典となる『旧約聖書』創世記とは異なるため、原典と比べながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。