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映画『どうしようもない恋の唄』は祥伝社出版による草凪優の官能同名小説を2018年に実写映画化した作品です。
監督は西海謙一郎、主演はカトウシンスケと藤崎里菜、グラビア界から間宮夕貴も出演しています。
物語はタイトルにもあるようにどうしようもない男と女の数奇な恋の物語です。
事業に失敗し死に場所を求める矢代光敏とソープランドで働くソープ嬢のヒナというのが歪な組み合わせでしょう。
社会のレールから脱線したダメ人間2人の恋の行方がどうなるのか、最後まで目が離せません。
本稿では矢代とヒナが最後に向かう先をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、ヤクザに血の色が見えた理由や忙しいと言った真意も併せて読み解きます。
社会的弱者の生き方
西海監督は本作に関して「全員ダメ人間として描いた」と公言していらっしゃいました。
確かに矢代とヒナをはじめ登場人物の中で誰1人まともな生き方をしている人はいません。
事業に失敗した男に風俗嬢以外の取り柄がない女、更に借金をこさえた風俗嬢とその彼氏にヤクザ。
見事なまでに世間一般の目から見た人生の負け組を地で行くような人たちです。
しかし、そういう人たちだって何も好き好んでその立ち位置に居るわけではありません。
矢代とヒナを中心にして描かれる社会的弱者の生き方は果たして何を伝えてくれるのでしょうか?
矢代とヒナが最後に向かう先
ソープランドの出会いから始まった矢代とヒナの恋は波瀾万丈に満ちたものでした。
仲良くなった筈の大蔵とレイコは離れていき、ヤクザからも搾取され暴行まで加えられます。
力なくへたり込む2人のカットで締めくくられましたが、この先どうなるのでしょうか?
人生の再出発
まず1つ目に矢代とヒナは人生の再出発に向けて動き出すのではないでしょうか。
物語としての大きな変化は矢代とヒナの自己肯定感が上がっていることで、それはこのやり取りから窺えます。
ヒナ「この後、どうする?」
矢代「どこへ行こうか。2人で」引用:どうしようもない恋の唄/配給会社:クロックワークス
そう、ヒナにも矢代にも全く後ろ向きのイメージがなく、言葉が前向きになっているのです。
表情もどこか落ち着いていて、初期の暗い雰囲気や脆さ・危うさがまるで感じられません。
自殺願望のあった恋人として一緒に暮らしていく中でいつの間にか生きる意欲を取り戻していたのです。
また、どこか自己肯定感の低かったヒナも矢代の支えとなることで自信をつけるようになります。
下手すれば共依存になりかねなかった2人の関係は血塗れとはいえその危機から脱しました。
精算
しかし、ヤクザが指摘したように今の2人はまだ底辺であり、ここから精算をしなければなりません。
それは人間関係の清算と自分がしてきたことの精算…この2つにしっかり向き合うことです。
まずヒナは恋人の為とはいえ麻薬の横流しという立派な犯罪行為を働いています。
彼女は間違いなくこの後警察に逮捕され、罪を償っていくことになるでしょう。
また、矢代もヤクザのお金絡みも含めて捨てられた家族などと向き合う必要があります。
自分がしてきたこととしっかり向き合い、マイナスを帳消しにして初めてスタートラインに立てるのです。