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ナチス政権かのドイツで、ユダヤ人としてアウシュビッツに収監されていた、認知症を患う二人の老人の復讐を描いた『手紙は憶えてる』。
アトム・エゴヤン監督に手掛けられた本作。手紙を通じてルディ・コランダーを探す旅の最後は、2人の老人の壮絶な記憶を明かして終わります。
映画の中で気になるのが、マックスの涙の理由でしょう。マックスの涙の意味は、90歳を超えた老人の長い過去の分、大変な重みがあります。
さらに主人公ゼヴが自害を選ぶ理由とゼヴとピアノの関係。
唐突の自害と、深くは語られないピアノとゼヴの関係には、大きな考察点が隠されていました。
今回はこれらについて、考察していきます。
ユダヤ民族迫害
本作は第二次世界大戦下におけるユダヤ民族について理解していないと、考察することは難しいです。
作中出てくるアウシュビッツとは何なのか、なぜルディ・コランダーを殺そうとするのか。
これらは、ユダヤ人と第二次世界大戦にある過去を知ると、深く理解できます。
アウシュビッツ強制収容所
ユダヤ民族で有名な人物は、『アンネの日記』で知られるアンネ・フランクでしょう。
ユダヤ民族は第二次世界大戦時、アドルフ・ヒトラーの「選民思想」により、排除の対象とされました。
そのため、戦時中ドイツ軍によりユダヤ民族は迫害されます。捕まったユダヤ民族の人々は、各地の強制収容所に入れられました。
その代表的な場所が、アウシュビッツ強制収容所です。つまり、ユダヤ民族にとっての憎しみの場所。
マックスやゼヴは、戦時中そこにいて、ユダヤ民族のマックスはそこで壮絶な経験をするのです。
家族の仇
アウシュビッツ強制収容所では、多くのユダヤ民族が虐殺されました。その中に、マックスの家族がいます。
家族をそこで殺されたマックスは、ナチスに関係するすべてを恨んでおり、復讐を果たそうと考えているのです。
強制収容所内のユダヤ人は、強制労働、武器の試し打ち、飢餓、ガス室での毒殺…
恐ろしいことのすべてが行われます。これが、本作の時代背景であり、マックスはその経験者なのです。
人生をかけた復讐の成就
マックスは壮絶な過去の持ち主であり、ナチスに対する強烈な憎しみを抱き続けて生きてきました。
その復讐を果たせたことにより、マックスは涙するのです。
オットー・ヴァリッシュを捜し出せ
終戦間近に数多くのナチス親衛隊員が、死んだ捕虜の身分を盗んだという噂がある。
引用:手紙は憶えている/配給会社:エンターテイメント・ワン
作中ゼヴが探しているのは、ルディ・コランダーという人物です。
このルディ・コランダーとは、ユダヤ人の名前を使った偽名で、その偽名を作っている人物は4人いると紹介されます。
偽名を語るのは、元ナチス関連の人たちで、マックスの宿敵にあたる人たち。
その中に元の本名が「オットー・ヴァリッシュ」という人物がおり、マックスはこの人物を最も憎んでいるのです。
つまりマックスが最後に涙するのは、このオットーに対して復讐を果たせたからでした。
隣にいた宿敵
結局オットー・ヴァリッシュとは、ゼヴのことでした。
半年前神は私に微笑んだ。君がこの老人ホームに越してきたからだ。
引用:手紙は憶えている/配給会社:エンターテイメント・ワン
これはマックスが、旅の道しるべのためにゼヴに渡した手紙の一部です。