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2019年公開の『バースデー・ワンダーランド』は、柏葉幸子の「地下室からのふしぎな旅」を原作とした映画です。
クレヨンしんちゃんの映画でお馴染みの原恵一が監督を務めることからも、公開前から大きな期待をかけられていました。
その期待を上回るファンタジーな冒険は、観る者に夢や希望を与えるものだったのではないでしょうか。
本作は鮮やかな色が注目されていますが、部屋の暗さと庭の明るさが示す母親ミドリの過去を深く考察していきましょう。
母からのプレゼントには、大きな意味が隠されていました。
部屋の暗さと庭の明るさ
色が心の在り様を現すかのような本作品は、映画冒頭の部屋の暗さがキーポイントになっています。
アカネの暗い部屋
見ているだけで溺れそうになる
引用:バースデー・ワンダーランド/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
松岡茉優が声を務める主人公アカネは、暗い室内から上記のように呟いています。
外の世界は明るく美しいのに、アカネの居る場所は狭く暗い場所です。
これは彼女の心の在り様をそのまま表現しているのでしょう。
SNSの狭い世界で閉じ込められたように生きているアカネは本当の自由を知らず、生きることの真の意味を理解していないのです。
それが綺麗なほど、自分には似つかわしくないと思ってしまうのでしょう。
母の明るい庭
アカネの部屋の暗い色とは対照的に、外の庭はとても明るい光に溢れています。
そしてアカネの母は、明るい光に包まれて風に吹かれ心地よさそうにしていました。
この時点では冒頭の悩めるアカネから見ると、母は気楽な専業主婦でしかありません。
しかしここで表現されている色の対比こそが、この作品にとって重要な伏線でありラストシーンへと繋がる部分です。
冒険後の変化
異世界の冒険から戻って来たアカネは、自分が居る世界の自然の美しさに気がついています。
久しぶりに母を感じたのは、アカネが母と同じ世界に居ることを実感できたからでしょう。
ラストシーンは、部屋の中にも明るい日が差しこんでいてとても明るく描かれています。
冒頭のアカネとラストシーンのアカネがまったく違う価値観を持っている、ということを表現しているのです。
明るい庭が示す母の過去
冒頭に出てくる明るくて綺麗な庭は、母親の過去を如実に語る重要なシーンでした。
母親ミドリの過去とは一体どんなものだったのでしょう。
600年前の女神は母だった
色を使い分けた見事な伏線は、異世界の1日がアカネが住む現実世界の1時間という設定で回収されています。
計算をしてみると、異世界での600年前はアカネの住む世界での25年前となります。