ハーランは、マルタの医療ミスを隠すために自ら命を絶ちます。
過失とはいえ、実際にマルタがハーランを殺害したとなれば立派な殺人になってしまうからです。
事実はマルタには何の過失も無い事件でしたが、限られた時間しかなかったハーランはマルタを守る一番の方法を考えたのでしょう。
最後のトリック
医療ミスを悔いて取り乱すマルタに対し、ハーランは肩を抱き彼女をなだめます。
ビザの降りていないマルタの母親を心配する発言をしますが、一番に考えていたのはマルタのことでしょう。
自分の家と家族について知り尽くしていたハーランは、マルタに殺人疑惑がかからないように行動を指示します。
死の間際だというのに詳細なトリックを考えマルタに実行させた彼からは、彼女を守りたいという強い意思を感じました。
許す愛・許される愛
2人の関係は老齢のミステリー作家と看護師というだけではありません。
友人として毎晩ひとときの時間を共有する彼らは、お互いを思いやる特別な感情を持ち合わせていたのでしょう。
囲碁を通してのやり取りや、負けを認めずに囲碁版をひっくり返すハーランの行動は、普段の彼からは想像もできないことです。
ハーランさんも途中で勝負を投げるお方ではない
引用:ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館/配給会社:ロングライド
ブノワが述べたこの台詞は、映画という短い物語の中でハーランの人間性を明確に表現していました。
ハーランは気の置けない相手との会話や勝負などの結論をハッキリと出すタイプだったのでしょう。
負けが見えたゲームの結論をおふざけでごまかしても許されるほど、2人はお互いにゆるぎない信頼関係を築いていたのです。
マルタとハーランとの間には、恋や家族愛を超えた愛の形があったのではないでしょうか。
繰り返しクローズアップされる血痕
マルタの白いスニーカーについた血痕は、ハーランが首を切ったときに付着したものです。
自分の命にタイムリミットがあると焦ったハーランは、戻ってきたマルタの前で自らの首を切り裂きました。
これにより、マルタがハーランが死んだ瞬間に立ち会ったことは最初から明確だったのです。
ブノワが謎を解くための伏線
本作の舞台はスマートフォンや化学調査が発展している現代です。
そのため、マルタの血痕を調べればハーランの血だということはすぐに分かり、マルタにハーラン殺害疑惑がかかります。
ハーランの死は自殺という流れだったため、警察はマルタの靴についた血痕にはノータッチでした。
しかし、ブノワは最初の事情聴取の時からそのことに注目。
彼女が怪しいと気づきながらも隠された真実を調べるために、ハーランの死の真相を掘り下げていったのです。
探偵としてのブノワの手腕
マルタ:教えてください 私がこの事件に関わっていると分かったのは…
ブノワ:初めて会った時に。あなたのその足を一目見て
引用:ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館/配給会社:ロングライド
ブノワは最初からマルタに裏があることに気づいていました。
しかし、ブノワにとって最も怪しいのは彼に依頼を出した人物。
つまりハーランが死ぬ前から彼の死を決定付けていたランサムになるのです。