音楽は古来より人間の側にありました。
長く生きる死神にとって、昔から親しんでいる娯楽だったとも考えられます。
もしかしたら死神たちは心が乏しい為に、ドラマチックな旋律を生み出すことが出来ないのかもしれません。
人間が生み出した音楽を尊敬していたのでしょう。
俺たち死神ってのは、人間の最期を演出するプロデューサーなんじゃないかって
引用:死神の精度/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
自分たちの役目をプロデューサーに例え、最後をドラマチックに演出しようとする姿も愛らしさを感じます。
死を探訪する千葉が行きつく場所
劇中では死神の千葉が、人間との交流を通し「死の判定」とは何かを探訪しています。
理解出来ない人間の死
どうしてあんなに泣くの?
きっともっと一緒にいたかったから
おじさん何も知らないんだね
引用:死神の精度/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
冒頭で登場した少女は、千葉が何も知らないといい残します。
死神にとって死は特別なものではありません。
なぜ人が死にこだわるのか、彼は理解出来なかったのでしょう。
しかし、いつも千葉が死について質問しているのは、死についてもっと深く知りたいというわけではありません。
彼の役割である判定に活かす為です。
死ぬのはそんなこわくねえよ、筋とおさねえなら死んだ方がましだ
その言葉を聞いて安心した
引用:死神の精度/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
「実行」の判定を出すのに参考にしていたと考察出来ます。
判定の基準を探していた
全てに「実行」をいい渡していた千葉ですが、彼なりに自分の判定に悩んでいたのではないでしょうか。
一恵のまわりの人が多く死ぬ理由を黒い犬に聞いたのも、死の判定基準を知りたかったからでしょう。
大した意味はない
引用:死神の精度/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
この答えを聞いて、千葉はこれまでの自分の判定に更に迷いを感じたのではないでしょうか。
死へ値する人間だから死神が向かう、だから「実行」は妥当だ、という考えだったのかもしれません。
しかし対象とされる人間に落ち度がないのなら、「実行」は果たして妥当といえるのか…。
筋ってもんだ、他に理由はない
引用:死神の精度/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
藤田が栗木を殺す理由を聞いたのも、死への判断基準を探っていたからでしょう。
判定の精度が上がった
千葉はかずえに偶然「見送り」の判定を出したことで、彼女の紡ぐ命の連鎖を目にします。
かずえの息子の阿久津、そして阿久津が連れてきた孫、命が連鎖していたのです。
私こんなに長く生きてきてよかったのかね
よかったんじゃないのかな
引用:死神の精度/配給会社:ワーナー・ブラザース映画
自分の出した「見送り」の判定が、間違っていなかったことに気がついたのでしょう。
全てに「実行」をいい渡してきた千葉は、彼女との交流によって死神の判定の精度を上げることになるのです。
生かすべきか、死の判定をするべきか、彼は今後これまで以上に悩むことになるはずです。
人間の死を軽視していた彼に、かずえは判定に対する悩みを置き土産にしました。
死という重いテーマを客観的に描いた名作
本作品は死神という立場から、人間の死を描いた作品です。
死神が「実行」を判断する時の基準は何なのか、私達が生きる意味を考えさせられるのではないでしょうか。
やまない雨が止んだ時、おそらく千葉には探していた死への基準が見えたのでしょう。
死という重いテーマにもかかわらず、コミカルで微笑ましい作品に仕上がっています。