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誰にとっても若き日の想い出はあります。まさにSUNNYといっていい理屈抜きに全てが楽しい時代です。
映画【SUNNY 強い気持ち・強い愛】はバブル崩壊後、世の大人達が為す術もなく呆然としていた時代に躍動した女子高生たちを描いています。
キャストの豪華さに目を奪われがちですが、この映画はそれだけではありません。
この映画はともすればつまらない日常の中に埋もれてしまいがちな我々皆に忘れかけていた何かを思い出させてくれます。
この映画で提示された幾つかの「なぜ」を彼女たちの心情から読み取っていきましょう。
芹香の遺言
余命幾ばくもない芹香は元SUNNYの仲間たちに遺言を残します。彼女はこの遺言で何をもたらし、何をいい残そうとしたのでしょうか。
彼女が残した遺言の実行にはある条件が付されていました。この条件の意味についても見てみましょう。
条件をダンスとした理由
芹香の遺言を実行するためには彼女の葬儀に集まった元SUNNYの仲間たちが皆でダンスを踊るという条件が付されていました。
この条件にはかつての仲間たちに対する芹香の強い思いがあります。
ある事件が切っ掛けとなってSUNNYのメンバーはこのダンスをダンスコンテストで披露できなくなり、それがSUNNYを活動中止に追い込みました。
芹香はSUNNYを再結成させたかったのです。ダンスコンテストで踊れなかったために止まってしまった時計をもう一度動かしたかったのです。
遺言のダンスは自分自身へのプレゼント
それは人生で最も輝いていた自分に一瞬でも戻るための芹香自身へのプレゼントでした。
同時にそれは平凡な日常生活の中で問題を抱えるかつての仲間たちに向けたメッセージであったともいえます。
もう一度「生きる」ということを思い出して欲しいという芹香のメッセージなのです。
死にゆく自分だからこそ、生きる仲間たちにこのメッセージを残したかったのではないでしょうか。
奈美と祐子には何も残さなかった理由
芹香の遺言では奈美と祐子には経済的なものを何も残しませんでした。
奈美にはSUNNYのリーダー役を渡すことを、祐子には整形したバストへの皮肉を残しただけです。
芹香は二人の生きる力を信じていました。自分で道を切り拓く強さを理解していたに違いありません。
一方、心と梅には最低限の経済的サポートが必要だと考えました。
SUNNYがSUNNYであるためには皆がフィフティフィフティである必要があり、過剰に施したり、施されたりする関係であってはいけないのです。
芹香は心と梅にはフィフティフィフティのレベルに戻るための支援が必要と考えたに違いありません。
美礼の場合
美礼役であった小野花梨の迫真の演技は注目に値します。美礼はなぜあれほど執拗に奈美に突っかかるのでしょうか。
また芹香が美礼の孤独と芹香への思いを理解しつつも、彼女を突き放し続けた理由も考察する必要がありそうです。
美礼には単なる悪者役というだけでなく、SUNNYの面々の生き様を考えるための比較対象としての一面もありました。