彼は代々受け継がれる土地の権利に執着したばかりに本質を見失い血みどろの抗争の末に死去しました。
それだけでなく弱き者に暴力を振るうわ薬物もやっているわ横浜で借金作っているわと負の遺産があります。
本当はそれらを精算するために1度破産しなければならないのに、その道すら選べなかったのでしょう。
人間死ぬときにはその土地も全部手放すことになってしまうのですから、こだわらなければ良かったのです。
長男に必要だったのは何よりも断捨離の精神だったことが窺えます。
父親の首をナイフで刺した理由
最期までダメ人間としての生き方しか出来なかった一郎は過去に父親の首をナイフで刺しました。
結果としては殺人未遂に終わるのですが、何故彼はそんなことをしたのでしょうか?
力で敵わないから
まずナイフという「武器」に頼っていることから鑑みると、力では父に敵わないからです。
DV父でありながら地元で有名な政治家でもあったので、権力も暴力も3兄弟より遥かに上でした。
だからこそ対抗するには力ではなくナイフのような殺傷能力のある道具だったのでしょう。
結果としては未遂に終わって折檻を食らいますが、この時彼らはナイフを隠していました。
この血塗られたナイフが後半において大きな伏線となっていたのです。
実はやったのは三郎
後半で衝撃の事実が明かされ、何とナイフで首を刺したのは一郎ではなく三郎でした。
この辺りは三郎の「実は怒らせたら最も怖い人」の特徴をよく表現しています。
政治家の父に反抗するようにデリヘル店長となり、更に葬儀にも1人参加しません。
末っ子気質な三郎は兄2人と違って暴力団の渦巻く世界でもやっていける器用さがありました。
ただ、その世渡り上手な日和見主義が終盤で仇となってしまうのです。
力なきものの末路
ラストの抗争で死んだ一郎の仇討ちという形で横浜のヤクザに挑んだ三郎はあっさり返り討ちにされます。
これは即ち上手く行かなかった父親殺しが大人になって擬似的に再現された形となるでしょう。
しかし、三郎の長所は器用な立ち回りとフットワークの軽さであって「力」はありません。
一郎のように腕っ節が強いわけでもなければ、二郎のように強い政治力もないのです。
「力」と呼べるものを特別に持たない三郎はナイフで挑もうとして銃という更なる力の前に敗北しました。
3兄弟の中で真の敗北者は一郎ではなく三郎だったのではないかとここから推測されます。
二郎が壇上で涙をこらえた意味
一郎・三郎に比べると情けないながらも比較的真っ当な生き方をしてきたのが二郎です。
利権争いに巻き込まれ、黙認しつつもそれに与することはせずに賢く回避しました。
そんな彼が壇上のスピーチで涙を堪えた意味は何だったのでしょうか?
一郎の死期を悟った
まず1つ目に一郎の死期を悟ったことを意味し、その涙を堪えているという意味です。
二郎は先輩から血に染まった公正証書を見せられ、一郎が利権争いの末に死んだと知りました。