カルシファーは「悪魔は約束をしない」と最初に言っていますが、ソフィーとの間に築いた信頼関係や絆がソフィーとの約束を守る理由となったのではないでしょうか。
原作小説とは違う映画のこだわりが伝えたいこと
原作小説と映画にはいくつかの違いがあることが分かりましたが、それは映画には宮崎駿監督が伝えたいメッセージが込められているからでしょう。
あるインタビューでは、宮崎駿監督の中に一番トゲのように残っている作品が「ハウルの動く城」だと語っています。
戦争について
映画「ハウルの動く城」では原作小説にはない戦争シーンが描かれています。
小説は児童文学なので戦争を描かったのかもしれませんが、宮崎駿監督は戦争シーンを入れることで伝えたいことがあったのでしょう。
劇中ではラストシーンで荒地の魔女がカブに「国に帰って戦争をやめさせなさい」と助言したり、サリマンが「馬鹿げた戦争を終らせる」と言っています。
宮崎駿監督は「子どもたちにこの世は生きるに値するというメッセージを伝えることが映画制作の根幹になければならない」と常々語っています。
「ハウルの動く城」では戦争シーンを描くことで子どもたちにその想いをより一層強く伝えたかったのかもしれません。
家族の大切さ
「ハウルの動く城」は家族の大切さについても考えさせられる映画です。
映画の中盤からはソフィーを中心に世代の違う人物が同じ屋根の下でお互いの信頼関係を築き上げていきます。
引っ越しをする理由としてハウルが「家族が増えたからね」と話す場面や、マルクルがソフィーに「僕ら家族?」と聞く場面は家族を思いやる大切さを表現しているといえるでしょう。
また現代ではペットも家族の一員です。」
サリマンの手下としてソフィーについてきた老犬のヒンが家族として大切にされている様子が描かれています。
高齢者との関係
サリマンに年老いた実年齢のお婆さんに戻されてしまう荒れ地の魔女ですが、ソフィーは荒地の魔女に魔法の呪いをかけられたにもかかわらずハウルの城に連れていき一緒に暮らし始めます。
荒地の魔女は歩くこともままならずご飯もソフィーに食べさせてもらうなどの手助けが必要な上に、頑固な一面がある様子も描かれています。
しかしソフィーは荒地の魔女に常に優しく話しかけ接しています。
映画の終盤に荒地の魔女がカルシファーを手放さないシーンがありますが、ソフィーは無理やり取り上げたり怒ったりせずに優しく抱きしめてカルシファーを渡すようお願いします。
こういったシーンを通して高齢者への接し方や高齢者との関係性に対して何かメッセージを残したかったのではないでしょうか。
ハウルとソフィーのその後
「ハウルの動く城」の原作小説「魔法使いハウルと火の悪魔」の後に発刊された姉妹編「アブダラと空飛ぶ絨毯」ではハウルとソフィーのその後を知ることができます。
「アブダラと空飛ぶ絨毯」は新たに別の主人公で物語が進んでいきますが、その中にハウルとソフィーが別の姿で登場します。二人は結婚しており子どもも誕生するようです。
まとめ
原作小説とは違う映画のこだわりやソフィーの魔女の呪いが解けた理由を徹底解説しました。
原作をベースに小説とは違う場面を多く組み込んで制作された「ハウルの動く城」ですが、そこには今の時代に向けての宮崎駿監督のさまざまな想いが込められています。