正式なルートではシーザーをウィルの家に引き取ることは難しかったのです。
当然シーザーには人間社会の細かなルールはわかりません。なかなか迎えに来てくれないウィルに、シーザーは自分は見捨てられたと考えてしまいました。
シーザーが壁の模様を消した行動は、施設の現実と向き合おうとするシーザーの決意を表しています。
いつまでも現実逃避をしても物事は解決しないと自分自身にいい聞かせたのです。
実は物語の大きな転換点はここにありました。ここから後々猿を組織化し人間社会と決別するためのシーザーの戦略的な行動が始まるのです。
シーザーとは
【猿の惑星:創世記】の主役はいわずと知れたシーザーです。なぜシーザーという名前なのでしょうか。
シーザーは歴史上の実在の人物です。フルネームはジュリアス・シーザーで、シェイクスピアの戯曲でも描かれています。
シーザーという名前が使われたのは、シーザーにはリーダーの代名詞的な意味合いがあるからです。
シーザーは古代ローマの英雄
歴史上のシーザーは古代ローマが内乱に揺れた時期に現れた軍事と政治の戦略家です。
自ら皇帝になることはありませんでしたが、古代ローマが共和政から帝政に移行するためのお膳立てをしました。
シーザーには多くの逸話が残されていますが、現代に至るまで多くのリーダーがシーザーを手本にし、またシーザーと比較されてきた事実があります。
猿の惑星に登場するシーザーにも歴史上のシーザーとの類似点が幾つか見られ、物語を興味深くしている要素の一つです。
実在のシーザーとの類似点
歴史上のシーザーは「賽は投げられた」といってルビコン川を渡ってローマ鎮圧に立ち上がります。
映画【猿の惑星:創世記】のシーザーが渡るのはルビコン川ではなくゴールデン・ゲート・ブリッジですが、新たな世界創世に向けて決意を新たにするという意味では共通しているのです。
また、どちらのシーザーも非常に優秀な戦略家という意味でも共通します。シーザーが施設の中で猿を組織化していく戦略術は見事といえます。
戦略の要諦は仲間づくりです。見方を増やし敵を分断して、戦力で優位に立つことが重要なのです。
物語の中で「猿は一人では弱いが集まれば強くなる」というくだりは戦略の要諦をそのまま表現しています。
地球が猿の惑星となったわけが明らかに
【猿の惑星:創世記】では地球がなぜ猿の惑星になってしまうのかという、猿の惑星シリーズの重要なテーマが描かれています。
我々には「猿たちと共生することはできなかったのか」という素朴な疑問がどこかに残ってるのではないでしょうか。
オリジナルの猿の惑星は人類の愚かさにスポットライトを当てていますが、新しいシリーズでは運命というか、種の必然のようなものが少し感じられます。
種の進化はある意味偶然の集合の結果による適者生存だともいえるでしょう。
であるならば、この物語のように偶然の技術革新とバイオハザードによって、地球の主役が人類から別の種に代わることもあり得るかも知れません。