幼いころから、人とのふれあいを知らない美沙子にとって、洋介の行動は戸惑うことばかりだったでしょう。 洋介は、そんな美沙子に自分と同じものを感じていました。 運命は2人に厳しい試練を与えますが、亮介という共通の生きがいを授かりささやかながらも愛に満ちた生活を送ります。 本来なら、生まれてすぐに知ることができる愛に、大人になって洋介と知り合うことでようやくたどり着いたのです。

ラストで家を見つめる亮介の心情

空 ラストシーンで実家の前で涙する亮介。母の存在が明らかになった時の亮介の心情を考察します。

そして母を許した

女性 ノートを読み終えた亮介は2つの衝撃を受けました。ひとつは自分が連続殺人者の血を受け継いでいるという挫折。 もうひとつは、父との血のつながりはないという出生の事実でした。 やりどころのない怒りにさいなまれる亮介。美沙子にとって一番恐れていたことが起こりました。 亮介に自分の過去を知られた時に備えて、常に陰ながら見守っていたのです。 血のつながりは、本当に心や行動に影響を与えるのでしょうか。 ノートを読んで暴力的な衝動を覚えたのも、亮介の思い込みでしかないように思われます。 美沙子と対面した時、亮介は美沙子の中に無償の愛を感じました。 そして亮介は母を許したのです。母の愛は血のつながりよりも深く温かいものでした。

父と母が短いながらも愛をはぐくんだ実家に涙する亮介

すべての事実を知った時、亮介は変えることのできない重たい過去の事実を受け入れることにしました。 悲しい連続殺人を犯し、そのために愛する洋介の元を去った母、美沙子の過去を含めてすべてを受け入れ許そうとした父。 愛することは許すことなのです。 ささやかな愛に包まれて父と母が過ごした家を見ながら涙する亮介。 あまりに悲しい2人の愛にやりきれなさを感じながらも、過去と決別して新しい人生を生きる希望が彼を包んでいました。

まとめ 亮介にとってのユリゴコロ

神が与える光 過去のすべてを知った亮介にとっての「ユリゴコロ」は、許し合う愛なのでしょう。 父と母は、運命の波に流されながらも無償の愛を亮介に与えました。 ノートを読んだことでつらい過去をめぐることにはなりましたが、そこに後悔はなかったようです。 両親の愛に包まれて過ごした家の前で、亮介は自分の「ユリゴコロ」を確信しました。