その後連鎖するように不幸が訪れますが、これは恐らく負のオーラに巻き込まれない為でしょう。

事実ボブがジェームズの所を去った途端に彼の人生は上手く行かずどん底まで落ち込みます。

気まぐれに動いているようでいて、実はちゃんと猫なりの理屈で動いていました。

これが物語のルールとして示されているからこそ本作が安易なご都合主義になっていないのです。

薬を断てた要因

断薬の決意

ボブとの出会いと別れを繰り返す中で薬物依存だったジェームズは遂に薬を断つことができました。

果たして彼が薬を断つことが出来た要因は何だったのでしょうか?

ボブとの再会

サバとの再会

まず1つ目に挙げられることとして、ボブとの再会が大きな要因となっています。

上述したようにボブは1度ジェームズの前から去り、ジェームズの人生はどん底へ突き落とされるのです。

しかし、それでもジェームズが断薬を決意し前向きになった時、またボブは戻ってきてくれました。

彼の人生が好転していくタイミングになると必ずボブは現われ寄り添ってくれます。

逆にいえば、ボブの寄り添いがなければジェームズは薬を断つことは出来なかったかも知れません。

それ程にボブとの出会いは彼の人生に大きな影響をもたらしているのです。

臨死体験

臨死体験 上 (文春文庫)

やや極端ですが、この断薬の苦しみはいってみれば臨死体験なのかもしれません。

ずっと薬物依存だったジェームズは体の中に溜まった毒素を全て洗い落としていたのでしょう。

禁断症状や幻聴・幻覚を断ち切ることは彼にとって生死の境目を彷徨う程の出来事だったのです。

人生の節目に人は必ず死に接近する出来事を体験し乗り越えていくものだといわれています。

ジェームズの場合は薬物依存の完治こそが正にその臨死体験だったのではないでしょうか。

転換期前の停滞

長期停滞の資本主義:新しい福祉社会とベーシックインカム

そして3つ目にこれをスピリチュアルにたとえるなら転換期前の停滞であるといえます。

この薬物依存の完治をきっかけとしてジェームズの人生は大きな転換期へ差し掛かるのです。

人生においてこのように大きな転換期に入る前には停滞や行き詰まりが発生します。

ボブが1度ジェームズの元を去って再びどん底へ陥ったこともその前触れだったのではないでしょうか。

その為のエネルギーを溜め込んで耐えに耐える時期だったという運気の流れなのです。

このように見ると、全ての停滞や苦しみが必然であったといえるでしょう。

父に会いに行った理由

父 Mon Pere (集英社文庫)

見事に薬物依存を完治させ、ヴァルに感謝の言葉を述べたジェームズは父に会いに行きます。

果たして何故ジェームズは最初に父の元を訪れたのでしょうか?

感謝

「感謝」で思考は現実になる

まず1つ目にあったのは父のみならず周囲の人達への感謝の意ではないでしょうか。

薬物依存を完治して健康体になったことで1つの境地へ達したことが窺えます。

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