ヴァルに述べた感謝の言葉をきっかけに彼は色んな人へ支えてくれたお礼をいいます。
でもその中で1番に感謝の言葉を伝えたかったのが父だったのでしょう。
父の方も決して見捨てていたわけではないことを明かし、関係性は回復していきます。
お世話になった人達への感謝を伝えることから全ては始まるのです。
伝記執筆の依頼
2つ目に薬物依存を完治したジェームズの元に伝記執筆の依頼が来たからです。
これがかの有名な『ボブという名のストリート・キャット』へと繋がります。
その伝記執筆に当たってジェームズは自身の半生を1つ1つ振り返らないといけません。
彼の人生を形作ってくれた最初のきっかけはやはり父だったのではないでしょうか。
ずっと路上ライブという形で逃げていた家族の問題と向き合う時が来たのです。
そうして見事にチャンスを掴んだ彼は全てを取り戻しました。
社会貢献
そして何よりもこの感謝を伝える行為自体がジェームズなりの社会貢献なのです。
スピーチで受賞した後、彼はお金持ちのベストセラー作家へと転身し自宅も購入します。
そしてそのお金をホームレスや動物への慈善事業へ投資し続けているのです。
これは即ち我欲の段階を乗り越えて社会の為に働く段階へ至ったということでしょう。
だからボブの中には父をはじめ色んな人達に対する恨み辛みはありません。
誰にでも訪れる人生の転機
本作の最後にジェームズはスピーチの中で自身の半生をこう締めくくっています。
誰にでもセカンドチャンスが訪れる。でもそれをつかみ損ねる者が多い
引用:ボブという名の猫 幸せのハイタッチ/配給会社:コムストック・グループ
これぞ正しく本作を象徴する最高の決め台詞ではないでしょうか。
人生諦めずに生き続ければ誰の元にも等しくチャンスは訪れるのです。
ボブとジェームズの出会いは運でしたが、運をものにしたのはジェームズの努力でした。
そんな誰にでも等しく訪れる人生の転機を見逃さず掴み取れるかは全てその人次第です。
非常に普遍的な人生のメッセージへと落とし込み、傑作へと昇華してみせました。
感謝と貢献の気持ちを
本作は猫との出会いと転機を通して人生のエッセンスをしっかり伝えてくれました。
ジェームズはボブとの暮らしの中でどんどん我欲を捨て去って自分を解放していきます。
そしてその先にあるのは感謝と貢献といった他者への思いやりなのです。
とても普遍的で、ともすれば価値観として凡庸に思えるかも知れません。
しかし、人生において本当に大切な物や価値観は簡単に変わるものではないでしょう。
当たり前のことほど大切な物はないということを本作は改めて教えてくれました。